・・・第一発見者は、やはり彼だった。

ミロ「おい、シャカ。ちょっと通してもらうぞ・・・・」

片手に味噌のパックをのせたミロがそう言いながら入ってきたとき、処女宮は何やら怒鳴りあう声でいっぱいだった。
主人であるシャカの声と、もう一つは・・・・久しぶりに聞く声。
 フェニックスだ。

一輝「嫌だと言っているだろう!?」
シャカ「君に拒否権など無いのだ!さっさと着ているものを脱げ!」
一輝「ふざけるな!!お前の思い通りになるくらいなら死んだ方がましだ!!くそっ、放せ!!」
シャカ「放すものか、君が言うとおりにしない限り・・・・・」

 もみ合っていた二人は、そこでふと、入ってきたまま硬直しているミロに気づく。
 
シャカ「・・・・ミロか。何のようだ。私は今忙しい」
ミロ「いや、その、ただ通してもらうだけ・・・・・」
一輝「ミロ!」

 と、シャカに腕をつかまれたままの男が叫んだ。

一輝「こいつを何とかしてくれ!俺の身体を狙っている!!」

 ずばごちゃっ!
 味噌のパックが、音を立てて地面に落ちた。





ミロ「どうして!なぜ!なんでいつも俺ばっかり!!」

 友人のところで不満を爆発させようとすぐさま引き返したミロだったが、宝瓶宮につくまで黙っていることができず、磨羯宮の住人でまにあわせることにした。

ミロ「蟹と魚がいちゃついてるだけでも俺的にいっぱいいっぱいだというのに・・・!何だ!?俺と味噌の食い合わせが悪いのか!?」
シュラ「いや、そう言うわけでもないだろうが・・・」
ミロ「もう嫌だ!こんなホモばっかりの異次元空間一秒たりともいたくない!!出て行く!!」
シュラ「落ち着け。まだホモと決まったわけではない。なにか事情があったのかもしれ・・・・」
ミロ「どんな事情だというのだ!!確かめられるのか!?」
シュラ「何で俺が確かめねばならんのだ。そもそもこういう問題を俺のところに持ち込むな!不毛極まりないだろうが!!」
ミロ「お前、隣人として少し冷たくないか!?」
シュラ「お前が熱すぎるのだ馬鹿者!!」

 そうこうしていると、上からカツカツと足音が聞こえ、アフロディーテが顔を覗かせた。

アフロ「シュラ。通してもらうぞ。・・・・?どうした?また怒っているのか、ミロ」
ミロ「また!?俺はそんなにいつも怒っているイメージか!?」
アフロ「怒っているというか、大抵熱いイメージだな。で、どうしたのだ?」
シュラ「実はな、シャカがその・・・・なんと言ったら良いのか・・・・」
ミロ「一輝とできてる!」

 穏便に説明しようとする他人の努力をあっというまに無に帰す男・スコーピオンのミロ。

アフロ「できてる、とは、そういうイミでか?」
ミロ「そういうイミでだ!」
アフロ「む・・・・」

 アフロディーテはしばし眉を寄せて沈黙した。それからおもむろに、

アフロ「・・・いいのではないか?そこに愛があれば」
ミロ「いいわけあるか!!聖域にホモは一組いれば十分だ!!奴らの存在をみとめるのなら、貴様がデスマスクと別れるがいい!!」
アフロ「別れるも何も、私達は別につきあってるわけではないのだが。それに、サガとカノンも同棲状態な訳だし、いまさら異種カップルの一つや二つ・・・」
ミロ「カノンもか!?おのれホモ、一匹いたら三十匹はいると思えとはこのことか!!あたり一面変態だらけだ、まともなのは俺一人!!」
シュラ「おい今、俺まで変態に入れただろう、お前・・・・;」
ミロ「問答無用!!こうなったらサガに直接辞表を叩き込んでやる!シュラ!紙とペンを貸せ!」

 まなじり吊り上げたミロは、シュラに無理矢理持ってこさせたボールペンで、紙にでかでかと「辞表」と殴り書いた。
 
ミロ「行って来る!!」
シュラ「いや待てミロ。『辞表』とはあくまでタイトルであって、内容をどこかに書かなければ意味が無・・・・」
アフロ「いいたい事は伝わるだろう。それより、あの紙がチラシの裏だと言うことの方が問題だ」

 しかし、書いた本人は何一つ疑問を感じたそぶりすら見せず、磨羯宮を飛び出して行ったのだった。





サガ「・・・・まずはじめに言って置くが」

ダンッ!!!

サガ「私とカノンは潔白だ!!今度そんなふざけた寝言を持ち込む奴がいたら星ごと砕くから覚悟しておけ!!!」
ムウ「・・・黒いですよ、サガ」

 その夜。教皇の間にはミロとシャカ以外の全員が緊急収集をかけられて集まっていた。

カミュ「・・・サガ。一応聞いておきたいのだが、その辞表を提出したミロはどこへ・・・・?」
サガ「名誉毀損罪で岬にぶち込んでおいた!カノンも一緒に!」
アイオリア「なぜカノンまで・・・;」
サガ「私の気分だ!そんなことより、一体どういうことなのだ!?誰か説明できるものはいるのか!?」
シュラ「俺が」

 なんで自分、説明できるのだろうと若干うんざりしながらも、シュラはミロが見たらしき一部始終を説明した。

シュラ「・・・という会話で、二人でもみ合っていたそうだ。以上」

 ・・・・・・・・・・・・・・・

デス「・・・別にいいんじゃねえの?ホモぐらい。たまにはそういうこともあるだろ」
一同「ねえよ!!」
リア「いくら聖域に女が極少だからといって、何も男に走る必要あるまい!?見損なったぞシャカ!!」
バラン「それより仏陀の生まれ変わりを自称するあの男が色欲に走っていいものなのだろうか・・・」
アフロ「OKだろう。要は心の問題だ」
カミュ「いや、十分に体の問題だ」
リア「俺は許さん!!断じてそんな倒錯はゆるさんぞ!」
バラン「・・・まあ、ちょっと微妙ではある」
カミュ「個人的にはどうでもいいが、しかし許せるかどうかというと今ひとつ・・・・」

 ムウがこほん、と咳払いをした。

ムウ「・・・・・落ち着きましょう、皆さん。とりあえず問題点を挙げてみるとして、今一番問題なのは・・・」
一同「一輝が受!!」
ムウ「・・・・あの・・・・それはそれで既に前提の何かを許容してしまっているような気がするんですが・・・・」
サガ「ええいくそっ!!」

 ゴガアっ!

サガ「この間デスマスクとアフロディーテが離婚したと思ったら今度はシャカか!!一体この聖域に何人のホモが潜伏しているというのだ!?身に覚えのある奴は今ここで名乗りをあげろ!!」
アフロ「サガ。そんなふうに毛嫌いすること無かろう。同性愛だって、根は純粋なものなのだ。なあ、デスマスク?」
デス「いや、俺は単に欲求解消できればいいだけだから」
アフロ「!」
シュラ「・・・おい。そこで怒るならまだしも、泣きそうになってるお前はどこかがやっぱりおかしいぞアフロディーテ・・・;」
ムウ「っていうか、ぶっちゃけた話、私はシャカが単に乙女座の聖衣を一輝に押し付けようとしていただけではないかと思うのですが・・・」
バラン「なあサガ。そもそも俺達聖闘士に恋愛は禁止されているのではなかったか?」

 と、アルデバランが言った。
 サガは苦々しげにうなずいた。

サガ「そうだ。私たちは本来、アテナに絶対の忠誠を誓う存在なのだからな。心に留め置く女性はアテナお一人のみ!・・・しかしこれが男相手にも有効かどうかとなるとその辺はちょっと・・・・」
リア「そんなもの有効もクソもあるか!!・・・ん?待て、女相手に恋愛は禁止だと?だったら俺は・・・・!」
サガ「魔鈴か。結婚するなら退職しろ・・・もとい、結婚できるなら退職しろ」
リア「言い直すな!!できるに決まっているだろうが!!」
デス「・・・・悪い。俺は無理に一万」
シュラ「俺も無理に一万・・・」
カミュ「それでは賭けにならんな。仕方ない。金を捨てるつもりで可能に千」
リア「泣かすぞ貴様ら・・・・」
ムウ「はいはい。そんなどうでもいい話は置いておいて。シャカと一輝に話を戻しましょう。彼らは今どこにいるんです?」
デス「何か、怒った一輝を追いかけてシャカも出て行ったっきり帰ってねえぞ。今頃二人で街にでもいるんじゃないか?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一同「デートではないか!!」
ムウ「いやそれは・・・・だから、聖衣を押し付けようとしているだけだと思うと・・・」
サガ「たとえ今は聖衣継承問題であったとしても、いつなんどき愛に目覚めるかわからん!!シャカが一輝に執心しているのは事実だ!」
アフロ「・・・そう言うところから目覚めたものを愛と呼んでいいのかどうかは微妙だがな」
サガ「大体何かがおかしいと思ったのだ!12宮編ではお姫様抱っこだったし!あいつらの仲をこれ以上進展させるわけには行かん。とことんまで邪魔をして破局を迎えさせろ!!」
デス「なんだかすげえタチ悪いぞあんた・・・・;」

 怒り心頭に発して裏工作命令を出すサガを見ながら、聖域の行く末について疑問を抱かずには居られない黄金聖闘士だった。





 邪魔をするのはいい(よくないって)。しかし、彼らは今どこに居るのか?
 その質問を受けたサガは、黙って一同を天秤宮へいざなった。

シュラ「?どういうことだ?ここにシャカが居るとでも?」
サガ「違う。ここから探し出すのだ。・・・・・お前達も知っているように、黄道12宮の黄金聖衣はお互いに存在を感知し、共鳴しあう性質がある。そこでだ。その特性を利用し、黄金聖衣の探査装置を作り上げた。それがこれだ!」

 言って指差すその先に、置かれているのは天秤座の黄金聖衣・アンテナつき。

ムウ「サガ・・・・真ん中に一本おったってる、このアンテナは一体・・・・」
サガ「触るのではないぞ。それが他の聖衣を感知するレーダーになってるのだから」
カミュ「いや、そういう問題ではなく、これは他人の聖衣だろう・・・?しかも老師の。勝手に改造してしまっていいのか?」
サガ「着用に問題は無い。ただほんのちょっとカスタマイズが強化されただけだ。聖戦が終わってからは使うこともないだろうし、当分ばれる心配もあるまい」
アフロ「悪いことだという自覚はあるのだな・・・だったら天秤座ではなく射手座の聖衣を使えばよかったではないか。どうせ持ち主は死んでるのだし」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サガ「その手があったかあああっっ!!」
シュラ「そこでそう言うリアクションをとるお前はアイオロスを何だと思って・・・・」
デス「何でもいいだろ、面倒くせえ。アイオロスも死んでるが、老師も生きてるとはいいづらい人種なんだから、別にどうってことねえよ」
ムウ「・・・・私的に、友人に対する非常に失礼な発言と取れなくも無いのですが、反論できないのはなぜなんでしょうね。・・・まあいいでしょう。それよりサガ、これはどうやって使うんです?」
サガ「ん?あ、ああ。とりあえず、こうして専用の紙に探したい聖衣の名前を書いてだな・・・」

 サガは用紙に『乙女座』と書きつけた。

サガ「それを天秤の片方の皿にセットし、ボタンを押す」

 ガッチョン。

サガ「すると秤が高速回転」

 ギュルルルルル・・・・・パシッ!

サガ「止まったところで秤の目盛りを読むと、黄金聖衣のありかの緯度と経度が計測されているというわけだ」
バラン「・・・なるほど。すごい機械っぽいが、黄金聖衣しか探索できないところが無意味だな」
カミュ「第一回目でホモの妨害のために使われるところがまた無意味さを如実に表しているしな」
サガ「グダグダ言うな!妨害に行くのはお前たちなのだぞ!さあ、場所を言うから配置につけ!」
リア「配置って・・・・;」
サガ「現在シャカの居る場所は、東経28度37分・南緯20度09分!ジンバブエ共和国の都・ブラワーヨだ!」

 ・・・行けと言うのか俺達に。
 一瞬誰もが思ったツッコミだったが、聞かないでも答えはわかるような気がした。
 出発前にアテネの本屋で全員が世界地図を購入したのは言うまでも無い。





 ジンバブエ共和国南西部の都市ブラワーヨ。人口は37万3000人。標高1400mの高地にあり、首都ハラレ、南アフリカ共和国、ザンビアに通じる鉄道、道路、航空路を持つ。ちなみにタイヤ産業が盛ん。

リア「それはどうでもいいが、どうしてそんな場所にシャカが来ているのだ!!」
デス「怒鳴られてもよ・・・シャカは一輝についてってんだから、一輝の方に何かの用があったんだろ」
カミュ「無いと思う。単にシャカから逃げようとして適当に南下した結果なだけで」
シュラ「南下しすぎだ・・・赤道越えてどうする;」

 一行はしばらくあたりをうろつきまわった。が、金髪のインド人千切れたTシャツの日本人も見つけることはできなかった。

ムウ「通行人に訊いてみますか。とりあえず、あの探査機で反応したということはシャカは聖衣を着たまま出歩いているということですから、『金の鎧の男を知りませんか』と訊き込めば一発だと思いますが」
アフロ「そういう人間と知り合いだと思われるのは非常に微妙だがな・・・」
バラン「構わん。確かにだが、旅の恥はかきすてという。訊いてみよう」
リア「よし!」

 しかし言葉が通じなかった。

カミュ「考えてみれば当然だったな・・・・あまりに長いこと無国籍地帯で暮らしてきたから、言葉に種類がある事など忘れていた」
ムウ「皆さん、何語話せるんです?」
リア「ギリシャ語と日本語
デス「イタリア語と日本語
アフロ「ハンガリー語と日本語
シュラ「スペイン語と日本語
バラン「ポルトガル語と日本語
カミュ「フランス語と日本語・・・とロシア語少々」
ムウ「なるほど。どこまでも局地的にしか用の無い言葉ですね」

 そう言う彼はチベット系。

リア「せめて誰か英語ぐらい話せるようになっておけよ!日本語など日本でしか使えんだろうが!」
ムウ「そう言う貴方が英語を勉強したらどうですか・・・と言いたいところですけど不毛なのでやめておきます。仕方ありません、ちょっとサガに連絡を・・・」

 ムウはテレパシーをとってみた。

----サガ。聞こえますか?
----ムウか!シャカはいたか!?
----いえ、まだ見つかっていません。通行人に聞き込みをしようと思ったのですが、あいにく言葉が通じなくて・・・
----なんだと?くそっ!お前達、誰もアフリカ語をしゃべれんのか!!
----今ので貴方もしゃべれないことバレましたね・・・アフリカ語って何語ですか。
----むっ、待て。探査機がまた動き出した・・・・いかん!シャカの居場所が変わった!
----次はどこです?
----北緯14度03分・西経87度13分!!
----・・・地名でお願いします。
----中米ホンジュラス共和国首都テグシガルパだ!!念のため誰か一人その場に待機させて、あとの者は即刻移動しろ!
----いえ、待機してても絶対戻ってこないと思うので全員で行きます。それではまた。

ムウ「・・・シャカはホンジュラスのテグシガルパに移動したそうです」
デス「どこだよそれ・・・っていうか、何だよそれ;」
ムウ「中米の国らしいです。地図貸してください」

 場所を確認し、黄金聖闘士達はブラワーヨをあとにした。





 ホンジュラス共和国首都テグシガルパ(年間通して湿度が高い)についたとたん、サガからテレパシーが入った。

----ムウ!シャカがまた移動した!
----大西洋横断してきたばかりの私たちにそれを言いますか。どこ行ったんです。
----日本だ!
----日本?
----ああ。沖縄から九州・四国にかけて、現在列島を北上中!
----・・・本当に何してるんでしょうね、彼ら・・・・

 ムウは報せを全員に伝える。

ムウ「・・・だそうです。行きましょう」
デス「行くのはいいけどよ。なんだか邪魔してるって言うよりも鬼ごっこしてるだけじゃねえのか俺ら・・・?」
カミュ「確かにな。後を追いかけても、シャカは移動しているのだし、また逃げられる可能性がある。って、別にシャカは逃げてるわけではなかろうが・・・とにかく、彼らの進路を予測して先回りしておいたほうがいいだろう。

 そこで列島を北上しているシャカの先手を打つため、一同は北海道にやってきた。
 が、しかし。

ムウ「!またサガから何か言ってきてます」
シュラ「何?」
ムウ「ちょっと静かに・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ムウ「・・・・・・・・ええと・・・・・・・・・」
リア「なんだ?何を言ってきた」
ムウ「シャカは・・・列島を北上している最中に威力が弱まり、北陸地方で消滅したと・・・」
デス「そんなわけがあるか!!台風じゃねえんだぞ!!もう一回調べなおせと言え!!」
ムウ「あ、また探査機が動き出したそうです。・・・次の場所は・・・・」
リア「場所は!?」

----北緯20度東経10度。ニジェール共和国の名も無き地帯。

ムウ「・・・・要するにサハラ砂漠のど真ん中らしいです」
アフロ「絶対いやだ!!日焼けする!!」
カミュ「私も暑いところはあまり気が・・・・」
デス「馬鹿!暑いところだからこそお前がクーラー代わりに役立つんだろうが!!」
カミュ「・・・・・最悪だなお前・・・・」
ムウ「すみません、サガ。どう考えてもデートコースではないと思うんですが、ギリシャ帰っちゃ駄目ですか・・・?」

 辺境に派遣されたセールスマンよろしく、ひっそりと上司にお願いするムウだったが、やっぱり許可は下りなかったという。




 かくして一行はついにサハラまでやってきた。

リア「皆。多分忘れかけてると思うのでもう一度確かめよう。俺達の目的はホモを妨害すること!そうだったな?」
バラン「・・・すまん。改めて確認するとなぜか泣きたくなる。やめてくれ・・・」
カミュ「あつい・・・・こういう時ミロがいてくれたら、『大丈夫か?俺が代わりに行ってやるからお前は先に帰って休んでろ』とか言ってくれるのだが・・・」
シュラ「そこまであれに甘えるのもどうかと思う・・・というか、それは単にミロを利用してるだけではないのかお前;」
カミュ「馬鹿な!私が友人を利用するような男だと思うか!?ただ、こちらに利用するつもりがまるでないのに、なぜかいつも利用されてしまう、それがミロという人間なだけだ!」
シュラ「・・・・・・・・生きてるといいな・・・・・・あいつ、本当に・・・・・・」

 辺りは見渡す限り砂だらけ。光をはじいてなだらかに連なる砂丘の上はきっぱりと空の青に分かれ、現実のものとは思えぬ不思議な眺めだ。
 そう、見渡す限りが、砂。
 当然シャカもいない。

アフロ「探すのか・・・?・・・歩いて探すのか・・・?ここでシャカを探すのか・・・・!?」
ムウ「私に詰め寄られましても;・・・それより貴方、その日傘どこまでも浮いていますよ」
バラン「ムウ、もう一度サガに連絡を取ってみてくれないか。ひょっとしたら、またどこかに移動済みかもしれん」

 が、サガからの答えは「いや、間違いなくサハラにいる!」とのことだった。

リア「おのれシャカ・・・こういうところだけ長めに滞在しやがって・・・!」
デス「一輝も、振り切るためにあえて過酷な環境につっこんでるみてえだな」
シュラ「シャカには無意味ではないだろうか・・・『心頭滅却すれば火もまた涼し』とか言いそうだ」
カミュ「皆。こういうときこそクールになれ。今一度落ち着いて考えてみようではないか。一輝はシャカから逃げるためにあえて過酷な地を選んでいる。また、逃げ回っているため一箇所にとどまり続ける事は無い。サハラからもやがていなくなるだろう。ということは、その際はより過酷な地へと赴くはずだ」
ムウ「それを読んで先回りしようということですね?」
カミュ「うむ」
デス「だが、サハラより過酷な所っつったら、あとは北極と南極ぐらいしか・・・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アフロ「・・・・・・・・・どちらだと思う?」
シュラ「二手に分かれるか」
バラン「以前に聞いた話では、北極よりも南極の方が旅をするには厳しいそうだ。南極は下が大陸なので、氷を割って魚を釣ることができんそうだから」
ムウ「いや、別にシャカたちは自給自足するつもりは無いと思いますけどね。ですが、より寒いのは南極だったと思います」
リア「南極か!」

 というわけで、一同は南の果てへとやってきた。

カミュ「ああ、この心地よい体感温度・・・・生き返るようだ」
アフロ「死にそうだ!!寒いなんてものではないではないか!!」
デス「仕方ねえだろ南極なんだから・・・。ほらアフロディーテ。ペンギンいるぞ、ペンギン
ムウ「そんなもので気をそらせる歳でもないでしょう。・・・シャカ、早く来てくれないと私たち凍死ですよ」

 待つことしばし。若干一命を除いた全員の意識が遠くなり始めたところで、ようやくサガからの連絡が入った。

ムウ「サガ!シャカはどうしました!?南極に来ましたか!?」

 返ってきた答えはこうだった。

----いや、すまん・・・・・シャカならたった今、聖域に戻ってきた。・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

全員「ぶっ殺す!!」

 直後に全員が爆発させた怒りの小宇宙は、さながらビッグ・バンと化して南極大陸を深々と叩き割ったという。





シャカ「・・・というわけでだ。聖衣を何としても継承させようとサハラまで追い詰めたはいいが、一輝の奴がそこで力尽きて倒れてしまったのでな。仕方が無いので話し合いは一時中断して、カノン島の噴火口に放り込んで置いたのだ。あれが復活したら、また一から話し合ってやるとしよう」
サガ「・・・非常に迷惑だろうな、それは・・・」

 聖域・処女宮。
 あっけらかんと素面で帰ってきたシャカに、サガは事情を説明してもらったところだった。

シャカ「ところで、他の奴らはどうしたのだ?なんだか聖域がいやに静かだが」
サガ「その件についてなのだが・・・悪いがシャカ。しばし留守を預かってくれんか。私はこれから亡命・・・・もとい、海外旅行に出かけることにした。後のことをよろしく頼む」
シャカ「?別に構わんが、急だな」
サガ「元をただせば貴様のせいだ・・・いや、もうそんなことを言ってる暇も無い。それではな!」

 サガは慌しく出て行った。
 それから一時間ほどたって。

捜索隊『サガはどこだ!!』
シャカ「なんだ、君たち。どこへ行っていたのだ?もう少し静かにしてくれたまえ」
リア「黙れ!えいくそ貴様、後でゆっくり千日戦争だから覚悟しておけ!」
デス「今はそれよりサガだ!あの馬鹿野郎はどこへ消えた!!」
シャカ「さっき、海外旅行へ行くと言って出て行った」
ムウ「逃げましたか。アルデバラン、天秤宮から探査機持ってきてください。改造して対人用にしましょう。地の底まで追い詰められるように」
バラン「わかった!」

 鬼のような形相で走り回る仲間たちを、シャカは不思議そうに眺めている。

アフロ「シュラはどうした!?」
デス「スニオン岬まで救出に行った!もう戻ってくるはず・・・」
カノン「サガあああああっっっ!!!」

 ダダンっ!!

デス「・・・な?」
アフロ「ほんとだ・・・」
カノン「サガはどこだ!!あの野郎の首は俺が取る!そして捨てる!!サガを出せサガを!!」
シュラ「ああ存分にやれ。・・・が、いないな、サガは」
デス「あいつ、海外逃亡したらしい」
シュラ「ほう・・・・あれだけ人をホモ妨害に走らせておいて自分は逃げに走ったか・・・許さん!!」
カノン「ホモ妨害だと!?それがサガの狙いか!だったら俺はホモ奨励に尽力してやる!!なあ、ミロ!」
ミロ「いやカノン・・・俺はそれすごく嫌だ、すごく・・・・・;」

 ・・・ホモ妨害ってなんだろうか。はたで見ていたシャカには何のことだかさっぱりだったが、とりあえず口出ししない方がいいだろうことは容易にわかった。
 その後、南緯23度23分・東経43度44分のマダガスカル島トリアラでサガが見つかって袋叩きになるまでの数日間、聖域は「ホモでも何でも好きなようにやれ!」という開き直りに満ち満ちていたという。



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