カノンの一日について。
朝・・・・寝てる。
昼・・・・起きて冷蔵庫をあさる。パジャマのままテレビを見る。
夜・・・・テレビに見飽きると夜の街へ出かける。
そのまま明け方まで帰ってこない。
サガ「こういう事ではいかんのだ!!」
その日、ついに兄は切れたのであった。
サガ「なんなのだこのパラノイア世代のような生活態度は!!あいつはこれでもアテナの聖闘士か!?恥を知れ!!」
パラサイト世代(親に寄生して自立しない若者のこと)の間違いのようだが、サガは本気で怒っていた。
もともと、彼は万事について一生懸命な性格である。しかし、双子でありながら弟の方は自分の欲望にどこまでも忠実な人間であった。
幼いうちはそれでも良い。アテナを殺すなどと大それたことを言いさえしなければ、やりたいことをやるのが若者の特権。
サガ「だがカノンはもう28才!!夢を見ていられる年ではない!!くっ、私が炊事洗濯掃除一切をしてしまうせいか!?あいつは何もせずふらふら遊び呆けるだけの人間になってしまった!こんなことではいかん・・・・!いかんのだ!!」
一瞬、カノンにも強制的に家事手伝いをやらせようかと考えるサガ。
いや。実際やらせたこともあったのだ。
掃除をやらせると、ゴミと一緒に家具一切を魔の三角地帯に飛ばした。
洗濯をやらせるとロクに水も切らないまま曇天の下に乾し、軒並みカビの餌食にした。
そして料理をやらせると、煮込み料理のはずなのに鍋ごと炎上するという理解に苦しむ事故を引き起こした。
悪気はなかったらしいが、むしろその分タチが悪い。
後始末の手間を考えると、正直、サガ自身が全てまかなった方がよっぽど楽だったのだ。
サガ「どうすればあいつが落ち着いて自立するようになるのか・・・・それに何より、こんな勝手なことでは他の黄金聖闘士達にも迷惑がかかる」
溜め息をついて考え込む。
小一時間もたった頃だろうか。とうとう彼は、一つの解決策を編み出した。
翌日。
サガの発表したその「解決策」は、十二宮の住人全ての度肝を抜いた。
黄金「見合い!?」
サガ「そうだ。あの愚弟に責任というものを教えるには、一家の主として身を固めてもらう以外にない」
ミロ「責任ったって、いきなり結婚までさせなくても・・・・」
シャカ「第一、考えの浅さではミロとタメをはれるほどのカノンに嫁いでくれるという女性が本当に存在するのか?」
ミロ「おいシャカ。どういう意味だ」
アルデバラン「ミロ。爪を伸ばすのは止めろ。つまらんことでケンカを始めても仕方がない」
サガ「カノンの相手となる女性のことなら心配は無用だ。心当たりがあったので手配した」
落ち着き払ったサガの言葉に、黄金聖闘士達はまた目を丸くする。
ムウ「心当たりとは・・・・一体どなたです?この近隣に住む方ですか?」
サガ「ああ。お前達も良く知っている」
アイオリア「・・・・・待て。俺達が良く知っている女・・・・って、まさか魔鈴ではないだろうな!?」
アイオリアが気色ばんだ。
アイオリア「冗談ではないぞ!カノンが魔鈴と見合いするぐらいなら、俺が魔鈴と見合いをする!!」
ムウ「今更見合いからでもないでしょう君たちは・・・照れ屋な男子学生じゃないんですから」
アイオリア「っ!!」
サガ「落ち着け、アイオリア。魔鈴ではない。私もそこまで地雷を踏もうとは思わん」
シュラ「ではシャイナか?まさかアテナではないだろうし」
ミロ「シャイナ?しかし彼女は星矢に気があるのだろう?無理矢理に見合いをさせるのはちょっとな」
サガ「シャイナではない。というか、聖闘士ではない。ごく一般の女性だ」
そこでまた、黄金聖闘士達は眉根を寄せた。
デス「・・・・・春麗だったら止めた方が良いぞ。あの女は結構普通じゃないし、老師と紫龍から要らん恨みをかうだろうし・・・・」
アフロ「いくらなんでもそれはないだろう。魔鈴よりも地雷ではないか」
サガ「もちろん春麗ではない。・・・・わからんか?」
わからない。
黄金聖闘士達は各々心当たりを思い出してみたが、一向にこれという女性を思い浮かべることができなかった。
全員、首を横に振る。
そこで、サガはとうとう打ち明けた。
サガ「彼女の名はアンナ。ロドリオ村に住む、カシモドの孫娘。祖父の臨終場面において、ベッドの横で泣いていた女性だ」
デス「誰が知るかそんなマイナーキャラ!!無駄に考え込んだ俺達の労力を返せ!!」
サガ「マイナーとかいうな!家事裁縫をわきまえた立派な女性だ!私が行って頼んだら、親子ともども快く見合いを了承してくれたのだ!」
ムウ「そりゃあ近所で神と崇められている貴方に『弟をもらってくれ』と言われれば乗り気にもなるでしょうけど・・・」
シュラ「・・・しかし神なのはサガであって、カノンは自称・悪の心しか持っていない男なのだから、これはかなり詐欺なのでは・・・・」
アルデバラン「詐欺以前に、純粋に迷惑なのではないか・・・?もし俺が女だったら絶対嫌だ」
アフロ「・・・妙な想像をさせる喩えはよしてくれ。女の君は見たくない」
ひたすら微妙な顔をする一同。
と、その中で一人、さっきから黙ってきいていたカミュが口を挟んだ。
カミュ「それで、サガ。その、肝心のカノンはどこにいるのだ?」
サガ「うむ」
サガはその問いを受けると急に顔を曇らせた。
そして言った。
サガ「今朝この話をもちかけたところ、猛反対をして暴れ出したのでな。仕方ないのでふんづかまえて、スニオン岬に入れてきた」
いい迷惑だったのは、むしろカノンの方だろう。
カノン「だせ!!オレをここから出してくれーーっ!!」
怒号は岬の隅々まで響き渡った。
今はまだ怒鳴ることもできるが、これが夜になると岩牢の天井まで潮が満ち、瀕死の目にあうことを経験者は知っている。
彼を放り込んだサガは立ち去り際にこう言った。
「カノン。その岩牢からは俺の力を持ってせねば生涯出ることはできん。覚悟を決めて入っているのだ。見合いの日が来るまでな」
カノン「弟の俺を殺す気かーッ!!しかも理由は見合い!!ふざけるなよサガ!!」
以前、彼が海底神殿に行くきっかけとなった牢の奥の穴は、今は完全に塞がれてしまっている。
もう抜け道はない。
カノン「おのれ!あいつのような男こそ偽善者というのだ!外面は良いクセして身内にはこれか!!というか、アテナ殺害計画と見合い拒否は同レベルか!?不遜な悪魔は貴様の方だ馬鹿野郎!!出せーっ!!ここから出してくれーーーーーっ!!」
どーんどーんと潮騒の音。
その音がひときわ激しくなってきた夕方、ようやく岩牢へ人影が下りてきた。
ミロである。
ミロ「カノン!大丈夫か!?」
カノン「ああ、全然駄目だ。ミロ、なんとかしてここから出してもらえないか!?」
ミロ「すまん。そうしてやりたいのはやまやまだが、この戸はサガでないと開けられん。天秤座の聖衣を持ってこようとしたら見つかって取り上げられたし・・・」
カノン「そうか・・・」
ミロ「俺には何もしてやれんが、いざというときに真央点をつくぐらいのことはできる。できる限りのことはしてやるから、少しで良い、安心してくれ」
どこまでも義理に厚い男だった。
しかし、実質的な役には立たない男だった。
それが蠍座のミロである。
ミロ「ほら。差し入れを持って来た。食ってくれ」
カノン「ミロ・・・・」
深くなった波をちゃぷちゃぷかきわけてまでして持ってきてくれたサンドイッチに、カノンは思わず涙ぐむ。
カノン「お前と友人で本当に良かった・・・」
ミロ「何を泣く。当たり前のことだろう。お前は何も悪いことはしていないのだ」
カノン「すまん。・・・・ミロ。あまり長くそこにいると、波に飲まれるぞ。これからどんどん潮が満ちる」
それを聞くと、格子の外の友人はますます気の毒そうな顔をした。
ミロ「そうか。なんならスカーレットニードルで五感を麻痺させてせめて苦しまないようにしてやることができるが、どうする?」
カノン「・・・・慈悲なのはわかるが、それをやられたら俺は今晩中に間違いなく、死ぬ。やめてくれ」
ミロ「・・・わかった」
二人がやや不穏な友情の会話をしていると、もう一つの人影が岩牢へ続く階段を降りてきた。
カミュ「ミロ。やはりここにいたのか」
ミロ「カミュ」
カミュ「・・・何をしているのだ、お前まで水に入って。勝手に天蠍宮を抜けるのもたいがいにしろ」
ミロ「友人がトラバコ入りしているというのにのんびり待っていられるか」
カミュ「だが、お前がそこにいても何の役にも立たないだろう?」
ミロ「・・・・それはそうだが・・・・しかし!」
カミュ「いいから戻って来い。カノンと心中する気か」
ミロ「カミュ!」
カノン「ミロ。いいのだ。カミュの言う通り、お前はもうもどった方が良い。ここの海をなめるな。俺は差し入れを持ってきてくれたその気持ちだけで十分だ」
カノンに説得されると、ミロはしばらく沈黙してからこっくり肯き、不承不承という感じで陸へ戻った。
そして、カミュに食って掛かる。
ミロ「お前はそれでも正義の聖闘士か!?まさかカノンの裏切りをまだ根に持っているわけではないだろうな!あいつが冥界でどれだけ力になってくれたのか忘れたのか!?もしここに閉じ込められているのが氷河だったら、サガの寝首をかいても助けようとするくせに・・・・・」
責めるミロ。
しかし、カミュはそれを無視してすっと右手を掲げる。
刹那、岩牢に流れ込んでは砕けていた大波が牢の前で凍り付き、壁となった。
カミュ「これで中にまでは潮も満たないだろう」
静かに言ってきびすを返す。
絶句しているミロに、
カミュ「カノンを仲間と認めているのはお前だけではない」
ミロ「カミュ・・・・」
カミュ「帰るぞ。ぐずぐずしているとサガが気づいてこの壁も撤去されるかも知れん」
ミロ「・・・ああ」
がんばれよ、と言い置いて、ミロはカミュと去っていった。
カノンは黙ってその二人の後ろ姿を見送った。顔には知らぬ内に微笑が浮かんでいる。
以前、この牢に閉じ込められたときにはアテナの愛に包まれていた。
そして今、彼は仲間達の思いに守られている。
翌日にはムウとアルデバランが連れ立ってやってきた。
ムウ「その壁では寒いでしょう」
ムウはそういって、氷壁の前にクリスタル・ウォールを張ってくれた。
アルデバラン「なんだったら、俺が壁になってやっても良いが」
カノン「いや、そこまではさすがに・・・・」
ムウ「何かあったらすぐに呼びなさい。いつでもテレパシー受付準備をしておきますから」
アルデバラン「サガには一応、見合いの件は思いとどまるようにそれとなく言っている。聞いてもらえないんだがな」
カノン「そのことについて、知っていたら教えてくれ。俺は一体誰と見合いをさせられるのだ?」
ムウ「知らないんですか?カシモドの孫のアンナですよ」
カノン「誰だそれは!訳が分からん!!本気かサガ!!」
ムウ「不幸なことに、かなり本気のようで」
カノン「あのヤロウ・・・ここを出たら全力でぶっ殺してやる・・・・!なんでそんな見ず知らずの人間と見合いをせねばならんのだ!!」
アルデバラン「落ち着けカノン。見ず知らずの人間とやるのが見合いなのだ。知り合いだったら見合いの意味がなかろう」
ムウ「決戦の日取りは明々後日だそうです。健闘を祈りますよ」
カノン「上手く行くわけがなかろうが!!おのれサガ・・・!!覚えてろよ!!」
その翌日はデスマスクとアフロディーテとシュラがやってきた。
デス「俺の手製の蟹スペシャル弁当だ。食え」
シュラ「大事はないか?何か斬って欲しい物があれば遠慮無く言ってくれ」
カノン「だったらサガを・・・」
アフロ「いや、それは駄目だ。これ以上彼に仲間殺しの罪を犯させないでくれ」
デス「そうだぞ、カノン。お前だって知ってるだろ?こいつが13年前に何したか。あんまり古傷をえぐるような事は言うなよ」
シュラ「かばってくれてるのか追いつめてるのかどっちだお前ら・・・・」
多分かばっているのだろう。
ただ、デリカシーというものが根底から欠如しているだけで。
13年前というと、カノンがサガに初めてスニオン幽閉されたのも13年前である。
カノン「・・・・・なんだか俺も改めていやなことを思い出した。とりあえず、万事諸悪の根源はサガなんじゃないのか・・・?」
デス「・・・・・・・・・そこらへんを自覚すると、また聖域で一悶着有りそうだな。やめておこう。戦犯の追求は」
アフロ「私たちが言い合っても、所詮責任のなすりあいにしかきこえんだろうしな」
カノン含めて全員が、脛に傷持つ身であった。
シュラ「思ったより元気そうで安心した。晴れの出所を待っているぞ」
デス「じゃ、後一日頑張れよ。見合いをぶっ壊したかったら、相手の前でアフロディーテに彼女のフリでもしてもらえ」
アフロ「殺すぞ蟹・・・・」
そして禁固最終日には、シャカとアイオリアがやってきた。
シャカ「覚悟はできたか?サガの愚弟よ」
アイオリア「お前はどうしてそういう物言いしかできんのだ・・・しかも出会い頭に」
カノン「フ、いいのだ、アイオリア。怒りは全て、出所後にサガにぶつけることにしてある。今の内にストックを溜めておきたいぐらいだ」
アイオリア「そ、そうか。だが、シャカも一応お前のことは朝夕心配していたのだ。サガに、『このシャカ生まれてから二十年もの間神仏と対話してきたが、未だに見合いで成功した夫婦の話など聞いたことも無い。それはこのシャカが悟りきれていないせいなのかな・・・?』と厭味をきいていたのを俺は知っている」
シャカ「余計なことを言うなアイオリア!何度も言っているはずだ、私は弱者に対する慈悲の心など持ちあわせてはいないと!」
アイオリア「仲間に対する慈悲ぐらいは持ち合わせているだろう。その手に持った風呂敷包みはなんだ」
シャカ「弁当だ。食べたまえ、カノン」
素直なんだか素直じゃないんだか良く分からない男、シャカ。
これも多分、悟りを開ききれていないせいだと弁当を受け取りながらカノンは思った。
シャカ「では失敬する。明日までもてばそのまま見合いだ。せいぜい瀕死の姿をさらしたまえ」
アイオリア「・・・・・お前、目よりも口を閉じた方が良いのではないか・・・・?;」
カノン「アイオリア、気を遣う必要はない。ここに来てくれたということだけでお前達の気持ちは分かる。ただ、一言だけサガに伝えておいてくれ。『首を洗って待っていろ』と」
すると、立ち去りかけていたシャカが振り向いた。
シャカ「サガは君の兄だぞ」
カノン「弟を牢に放り込んだまま一度も見舞いにこない男など、もはや兄でも何でもないわ!!しかも俺は今回かなり無実!!兄弟というだけで見合いまで決められてたまるか!!あんな男に兄貴面をする資格など無い!!」
シャカ「・・・・そう思っているのは君だけだ。あれはやはり君の兄なのだ。認めてやりたまえ」
謎のような言葉を一方的に言い放つと、シャカは口の端に少しだけ笑みを浮かべた。
帰るぞ、とアイオリアを呼ぶ。
呼ばれた方はカノンを振り返り、ちょっと肩を竦めて「何考えてるんだかさっぱりわからん」というジェスチャーをしてみせると、すぐに後を追った。
カノン「何が兄だ・・・・」
ぶすっと呟く。
そして次の朝まで、出所したらいかにサガをとっちめてやろうかと色々考えつつ過ごしたのだった。
見合いの日の朝。
カノンがスニオン岬に閉じ込められてから初めて、サガが姿をあらわした。
サガ「今出してやる。大人しくしろ」
言われるまでもなく、カノンに大人しくする気はさらさら無かった。
ガチャッ。
カノン「ギャラクシアンエクスプロー・・・・・!!」
サガ「大人しくしろと言ったはずだ!!」
扉が開くや否や技をしかけるカノン。
仕掛けられるや否や弟のみぞおちに一発食らわせるサガ。
軍配は兄に上がった。
サガ「お前はこの四日、ろくに栄養を摂っていないのだ。いくら仲間の助けがあったとは言え、弱っているのが当たり前だろう。その状態で私に敵うと本気で思っているのか?」
カノン「敵わなくても殺す!!」
サガ「やめておけ。双児宮に朝飯を作ってあるから、それを食べて今日はゆっくり寝るのだな」
カノン「誰がそんなもん食うか!!見合いも絶対にごめんだからな!!閉じ込められようが殴られようが、俺は見合いなんかしない!!『御趣味は何ですか?』と聞かれたら『世界征服です』と答えてやるからそう思え!!」
サガ「一応考えてはいたのだな。見上げた根性だ。だが、残念ながらそれには及ばん。見合いは断った」
カノン「それから特技を聞かれたら・・・・何?断った?」
特技を聞かれたら『ゴールデントライアングルです』(あくまでサガとかぶらないやつ)と言ってやろうと考えていたカノンは、あまりにも急な宣言に、一瞬戸惑いを隠せなかった。
カノン「・・・・じゃあ何をさせるつもりだ」
サガ「別に。何も強制はせんから安心しろ。ただ、今後は自分の下着ぐらいは自分で洗うように。それだけだ」
カノン「待て!どういう事だ!何を企んでいる!」
サガ「企んでなどいない。本当に見合いをさせるつもりだったが、この数日仲間達からやめろやめろとうるさいのでな。シャカに厭味はいわれるし。だからやめたまでだ」
カノン「・・・・ふざけるなよ。幽閉された俺は一体なんだったのだ!待て!逃げるなこのっ・・・・!!」
さっさと立ち去るサガ。
それを追いかけようとして足がふら付き、すぐには復讐もかなわないことを知ったカノンは、地団太を踏んで悔しがる。
カノン「覚えてろよ!!回復したら真っ先にお前の首を取ってやるーーーっ!!」
その絶叫を背中に聞きながら、サガは静かに微笑んでいた。
この四日間、彼は毎日スニオン岬を見下ろす崖の上から、密かに弟を見守っていた。
見合いをさせようと思ったのはカノンにしっかりしてもらいたかったから。
しっかりしてもらいたかったのは、他人に迷惑をかけさせたくなかったから。
迷惑をかけさせたくなかったのは、誰にも彼を嫌わせたくなかったから。
しかし、蓋を開けてみれば、弟は嫌われるどころか十二宮の住人全てから心配され、皆がサガに内緒でスニオン岬に出向いた。
それで十分だった。
まあ、おかげで自分の方は大分株を下げてしまったようだし、四日の徹夜で体の方にも相当疲労が来ているが。
サガ「・・・・・俺も、今日は寝るとするか」
呟いて、たまらずにサガは少しだけ笑った。