思うのです。ちみっちゃい頃のアフロは可愛かっただろうなあと。
 で、ほら、ギリシャって神話の時代から同性愛があるじゃないですか。ゼウスが美少年囲ったりしてるじゃないですか。日本でも西洋でも長い戦になる時はそれ専用の男の子を連れて行ったと言いますし。

 聖域で禁欲生活しながら修行に励んでいる男どもがいます。彼らは聖衣を獲得するため日々厳しい試練に耐えていたのです。
 が、ある日突然9歳かそこらのこんなちみっちゃい女の子みたいなガキが来て、最高峰の黄金聖衣をもらってしまいました。
 普通ブチ切れるでしょう。俺らの修行は何だったんだと。

アフロ「得意技はバラを投げることですv」

 ふざけてんのか。
 そんなわけでギリシャに来たばかりの子魚は先輩である雑兵どもの一部から色々嫌がらせを受けることになりました。
 アフロディーテも黄金聖闘士ですからその気になればバラをぶっ刺して殺っちまう事も十分可能です。しかし一応新入りなので大人しく泣き寝入りしているうちにどのタイミングで怒ればいいのかわからなくなってしまいました。

 ・・・ちなみに一足早く聖域入りしていた山羊と蟹ですが、山羊は最初の喧嘩を売られた瞬間にメンチを切って大地を叩き割り、勝利。蟹はインネンをつけた者が24時間以内に謎の死を遂げるという怪奇現象で対抗し、勝利。問題なく聖域に溶け込んでいます。

 恐ろしくも逞しい友人二人と対照的に、アフロディーテはなかなか反撃の糸口が掴めません。面と向かって悪口を言われればバラでお返しなのですが、山羊や蟹と違って彼の場合は全身撫で回されるなどのセクハラ的な苛めをされるので、「・・・もしかして可愛がってくれてるのかも」と阿呆な事を考えてしまうのです。
 抵抗しないちび魚の不甲斐なさは雑兵たちの苛めをエスカレートさせました。
 とうとうある日、雑兵の集団に囲まれた彼は、捕まえられて掘っ立て小屋に監禁されてしまいました。
 暴れたらどうなるか覚えてろ!と脅されて、すっかり怯えています。しくしく泣いているうちに夜になり、大漁祝の酒をかっくらった男達は隣の部屋でどんどん騒がしくなっています。
 そのうちに、さあてあのチビをやるか!と言う声が聞こえたのでアフロディーテはすくみあがりました。蟹から与えられた知識で「やる」を「殺る」だと思い込んだのです。9歳児にはまだ「犯る」というボキャブラリーはありません。
 
 と、隣が急に静まりました。
 それっきり何の音も聞こえません。

 不思議に思ったアフロディーテが涙の溜まった眼をぱちくりさせていると、監禁部屋のドアが開いて、とげとげ頭がのぞきました。

アフロ「デスマスク!」
デス「・・・帰るぞ」

 縛られていた手を解いてもらい、足枷も壊してもらって大喜びのアフロディーテ。
 デスマスクの腕に絡み付いて外へ連れて行ってもらいます。
 隣の部屋を通り過ぎる時、雑兵たちが全員床に転がっているのを見ました。

アフロ「どうしたのだろう」
デス「寝てるんだろ」

 いつになく言葉少なだった蟹に送ってもらったこの日以来、アフロディーテは苛められる事がなくなりました。




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