第4ラウンド VSリュムナデスのカーサ

紫龍にかわって画面に登場した金髪の小僧を見て、大喜びしている男が一人。

カミュ「氷河・・・・しばらく見ない間に大きくなった・・・・」
シオン「成長期かオイ。あの小僧、カミュのなんなのだ?」
シュラ「最愛の弟子です。教皇、あまり深くかかわらない方が身のためかと・・・」

――――――――おかしい。どうもさっきから同じ所をぐるぐる回っているような気がするが・・・
            急がなくては!みんなが必死に闘っている時にオレだけ未だにたどり着けないなんて・・・

デス「まったくだ。紫龍なんぞ死に掛けているというのになんという役立たず・・・・うおぅっ!?」
カミュ「・・・・・・・・・・・・・」
アフロ「カミュ!怒るのは勝手だが辺りの気温を下げるのはやめろ!!肌が荒れたらどうしてくれる!」
シオン「肌荒れはどうでもいいが、神経痛に響くからやめてくれ」
シュラ「それ以前の問題で、そんなことで怒るのをよせ。クールを貫き通すのではなかったのか」

 寒さに震える一同の説得により、なんとか機嫌を取り直すカミュ。
 一方、氷河はいよいよ柱を守る海将軍と遭遇したのだが・・・・・

カミュ「なっ!?あ、あれは・・・・!!」

――――――――カミュ!!我が師カミュ!!

カミュ「待て氷河落ち着け違う違う私じゃないぞ待て待て待て!!
シオン「いいからまずお前が落ち着け」
カミュ「(聞いてない)いいか氷河!私は宝瓶宮で既に死んだのだ!!大体、笑顔で出迎えている所からして私ではありえないだろう!?騙されるな!!」
ロス「自分で言っていてなにか疑問を感じないのだろうか・・・・その台詞・・・・」
サガ「今は何を言っても聞こえんだろう・・・・とりあえず、様子をみようではないか」

 様子をみていると、氷河はともかくも目の前のカミュを偽物と断定し、怒り狂い、ダイヤモンド・ダストを食らわせ、カリツォーをしかけ、おまけにホーロドニースメルチまで繰り出していた。
 お世辞にもクールとは言いがたい行動である。
が、しかし。敵もさるものひっかくもの。
 ホーロドニースメルチを両手で受け止め、逆にオーロラ・エクスキューションをお見舞いした。

カミュ「ふざけるな!!私が命を懸けて氷河に伝授したオーロラ・エクスキューションをなぜ貴様が使っている!!使用料をとるぞ!!
ロス「特許申請していたのかカミュ・・・・クールというより、かなりドライだ」
デス「どうでもいいが、そろそろ騙され始めてるぞお前の弟子
カミュ「う・・・・・」

 デスマスクが指摘した通り、オーロラ・エクスキューションをみせられた氷河はすっかり敵を師匠だと信じ込んでしまったようだった。
 まあ、外見そっくりで実力も技もそっくりなら無理も無いのかもしれない。それに敵も、ふっ飛ばした後に「大丈夫か!?」と駆け寄っていく辺りなど、本気で芸が細かいし。

――――――――カ・・・カミュ・・・ほ・・・本当に・・・本当に生きていたんですね。よかった・・・・

カミュ「氷河・・・・(じ〜ん)」
シュラ「阿呆!!感動している場合か!!敵の罠に引っ掛かってるんだぞおい!!」
カミュ「はっ!そうであった・・・!氷河!!しっかりしろ!!泣いてたら死ぬぞ!!」

――――――――我が師カミュ・・・またこの氷河を指導してください、いつまでも・・・・

カミュ「泣いてたら死ぬといってるのだ氷河!!母親に会いたくはないのかーーっ!!?」
デス「会える時こそそりゃ本当に死んだ時なんじゃ・・・・・・」
シオン「『いつまでも』って・・・独り立ちしろよ早く」
カミュ「あ!氷河!!」

ザクっ!!

カミュ「・・・・・・・・・」

 めそめそしている内に首への一撃をくらい、血を吹き出しながら昏倒する氷河。
 起き上がる気配はない。

シュラ「・・・・・・・・・・・・・・役にたたん・・・・」

−273.15℃

アフロ「やめろ!!図星を指されたからって絶対零度にすることないだろう!?」
デス「いかん・・・・凍死しそうだ・・・」
シュラ「むうっ!黄金聖衣が凍り付き始めた!!おい、誰か何とかしろ!!」
サガ「何とかしろといわれても・・・・何とかするべきは他でもないカミュなのでは・・・」
シュラ「こんな時のための緩衝材(=蠍はまだ現世で生きてるし・・・・」
アフロ「はっ!私のバラがせんべい状態だ!このままではバナナで釘が打ててしまう!!
デス「おい、その撮影機でミロと連絡とってなだめてもらえ!!」
シュラ「しかし、これはバッテリーが・・・」
ロス「待て。昔老師がおっしゃっていた。黄金聖衣には太陽の力があると!ひょっとして我らの力を使えば、ソーラー発電が可能なのでは!?」
一同「それだ!!
シオン「・・・・・・・・・・・・・;」

 ・・・・おまえら・・・・そのうち間違いなく聖衣に見放されるぞ・・・・・・

 がちゃっ!ちゃっ!
 ・・・・・・・ピーッ!

ロス成功だ!! 
シオン「・・・・・・・・・・・・・・・・(滝汗)」
デス「さっさとカミュをミロにあわせろ!寒くて感覚麻痺してきたわ!」
シュラ「よ、よし!ほらカミュ、しっかり立て!」

 ジーッ

カミュ「ミロ・・・・久しぶりだな・・・」
――――――――うわうっ!?はみゅ(カミュ)!?もまえ、もーひてももに(おまえ、どうしてそこに)・・・・・!?
カミュ「貴様・・・海底で氷河達が死に掛けているのにカップラーメン食ってるとはどういう了見だ・・・」
――――――――(もぐもぐごくん)っそんなこと言ったって、俺だって人間だ!腹も減るわ!夕飯時に出てくるお前が悪いのだ!!

 夕飯なのかカップラーメン・・・・
 アテナ・・・生きて帰ったら給料上げてやれや・・・・

――――――――それはそうと・・・お前、今、氷河が死にかけているとか言ったな!?本当か!?
カミュ「ああ・・・・すぐに現場に飛んでいって棺を作ってやりたいのだが、死んだ身ではどうにもできん・・・」
――――――――そういうのを究極のありがた迷惑というのだ・・・まだ死んだわけではないのだろう・・・?
カミュ「しかし・・・・時間の問題で・・・・・・」
――――――――信じられん。氷河ほどの男が・・・海将軍どもはそんなに手強い相手なのか!?
カミュ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、いろんな意味でな
――――――――一体どうやってやられたというのだ。
カミュ「きかんでくれ・・・・思い出すのが辛い・・・・・・」
――――――――カミュ・・・・よし、わかった!お前亡き後氷河の後見はこのミロだ!今すぐ海底に飛んでいって、海将軍ごとき蜂の巣状態にしてくれる!心配するな!氷河はきっとたすけてやる!俺に任せろ!!
カミュ「ミロ・・・・恩に着る・・・・」

 ジー・・・・パチン。
 撮影機を止めた後、しばし一同は無言であった。

シュラ「・・・・・・・・・・・・・何も聞かずにあそこまで・・・・・・ミロ・・・おまえ本気でいい奴・・・・・・」
デス「いや、なんかもういい奴っていうか、単純だよな・・・・カモにされるんじゃないか・・・?」
アフロ「なまじああいう後見がつくから、キグナスがちっとも成長しないのだ。すこし放任した方がいい」
シュラ「やめろアフロディーテ。せっかく常温に戻ったのに、これ以上カミュの神経を逆なでするな」
ロス「落ち着いたか?カミュ」
カミュ「ああ・・・・少し」
サガ「おい。そんな事より、今度は星矢が・・・・」

 む?
 サガにいわれてテレビを振り向けば、南氷洋の柱の前に立ち尽くしている星矢の姿が映っていた。

ロス「?どういうことだ?星矢は南大西洋の柱に向かったんじゃなかったのか?」
サガ「さあ・・・よくわからんが、ともかくあそこにきてしまったのだ」
ロス「・・・・待て。星矢の前に立っているあれは・・・・・魔鈴!?」

 どうやら今度は星矢が騙される番らしい。
 
サガ「しかし、いくら相手が魔鈴の姿でも、邪魔をされれば星矢だって・・・・」
シュラ「いや。まだ何か裏があるらしいぞ」

――――――――フッ・・・魔鈴とは仮の名・・・私の本当の名は、星華!!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一同「誰?」
シオン「もうすこし遠慮のあるツッコミしたらどうだ、おまえら・・・・」
アフロ「おいサガ。君は星矢の修行時代、ニセ教皇として聖域で見守っていたのだろう?なにか知らないのか」
サガ「う、うむ。今思い出そうとしているんだが・・・・」
シュラ「星華・・・星華とはいったい・・・・!!」
シオン「うろたえるな小僧ども。星矢に星華・・・・どうせ生き別れの姉かなんかに決まっておろうが」

 図星だった。

シュラ「さすが本物の教皇・・・!!やはり偽物とはわけが違う!!」
シオン「・・・・・・いや、こんな事で認識改められても・・・・・おまえら13年間気づかなかったくせに」
サガ「気づかなくても特に差し障りはありませんでしたよ」
シオン「さらりと毒を吐くな!!なんだ今のは!?黒サガ降臨か!?
ロス「きょ、教皇・・・!大人げないから足蹴にするのはやめてください!!」
カミュ「どうでもいいが・・・・やられてしまったぞ星矢・・・・」

 姉に会えた喜びを十分かみ締めるまもなく、ペガサスは腹部に一撃をあび、氷河同様あっさりさっぱり倒されてしまった。
 ・・・・・・・あー・・・・・・・・・・・・
 とりあえず、カミュはともかく戦場に姉さんがいるわけはないんじゃないのか星矢・・・・・
 もしいたとしてもこのタイミングで正体バラスのは絶対おかしいとか、欠片でいいから思って欲しいものである。

シオン「・・・・と、それはそうと、魔鈴とやらは本当に星矢の姉なのか?」
サガ「そういう話は白銀聖闘士どもが一時噂していたような気がしますが・・・・なにぶん、素顔を見たのもこれが初めてですので・・・」
シュラ「あの素顔が本物かどうかも分からないしな」
デス「アイオリアなんか、仮面の下を見たことがあるんじゃないか?好きな女なんだろう?」
ロス「よし。ちょっと撮影機を貸せ

 ・・・・ついにデバガメな扱いをされるに至った撮影機が、なんだか不憫なのは私だけだろうか・・・・
 しかし、その思いを口に出せぬまま、獅子宮とのコンタクトは実行されてしまった。

ロス「アイオリア。元気にしているか我が弟よ」
――――――――にっ、兄さん!?なぜあなたがここに・・・・!?
ロス「ちょっと聞きたいことがあってな」
――――――――なんですか?
ロス「魔鈴とは上手くやっているか?」
――――――――ぶっ・・・・・!な、な、な、何をいきなり!?
ロス「フッフッ、うろたえるところを見ると、巷の噂もあながち外れではないらしい」
――――――――止めてください!ポセイドンが動き出した今、そんな話している場合ではないのです!!

 まったくだ。

ロス「話を逸らそうとしてもムダなこと。おとなしくその胸の内を吐け。大丈夫、他の人には言わんから
――――――――その『他の人には言いませんから』を信じてムウに打ち明けたばかりに噂が広まったのです!二度と誰にも話すものですか!!

 話さずとも今ので全てをバラしたような気が・・・・・

アフロ「なるほど・・・ムウとアイオリアはあまり仲が良くなかったが原因はそれか・・・」
デス「あの穏やかな笑顔を簡単に信用するからそんなことになるのだ。ああ見えてかなりの食わせもんなのだぞムウは」
シオン「・・・・私の前で弟子の悪口を言うな・・・・」

――――――――ともかく!お話するようなことは一切ありません!!たとえ兄さんでも!!
ロス「そうか。それなら仕方がないが・・・・・時にアイオリア。おまえ、彼女の素顔を見たことはあるか?」
――――――――ありません!
ロス「・・・・好きな女の顔だぞ。見たいとは思わんのか。」
――――――――誘導尋問は止めてください!!大体、女聖闘士の素顔は、見たら最期愛されるか命を狙われるかどちらかなのですよ!?愛されれば問題無しとして、万が一にでも憎まれた日には二度と立ち直れません!!
ロス「・・・・・・・・・・・まあ、健闘を祈る。邪魔をしたな」

 顔を耳まで赤く染めたアイオリアに別れを告げると、アイオロスは撮影機の電源を切った。
 心の底から無駄な一コマだった。・・・

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