一輝と瞬は、ご近所の評判になるほど仲の良い兄弟である。
 長期不在の後満身創痍になって帰宅する、兄弟であまりに顔が違いすぎる、等の事実から、一時は「暴力団関係者」あるいは「実は三十路のパトロンとその稚児」等という不名誉な噂になったこともあったが、聖戦も終わった現在は二人とも比較的落ち着いて日々を過ごしていた。

 ・・・・ところが。

「くそっ!どこへ行ったんだ瞬!!」
その夜、一輝は方々へ電話をかけまくっていた。
 夜中の12時を回っているというのに、瞬が外出したまま帰ってこないのである。
「もしもし!星矢か!?瞬から何か・・・・・そうか・・・ああ、まだみつからんのだ。・・・すまない。何かあったら連絡を頼む」
 受話器を置くたび、焦りが募る。
「もしもし!紫龍か!?・・・・・・・は、田中さん・・・・・すみません、間違えました
『何時だと思ってんだバカヤロー!』
 知り合い宅へ何度も電話を掛け直すが、弟から連絡があったという者はいなかった。
「むう・・・瞬は可愛いからな・・・変態オヤジに目をつけられたか?これは本格的に誘拐かも知れん!!」
 兄さん、実弟が聖闘士だということを忘れている。
「大体どこからも瞬の小宇宙が感じられんというのがおかしい!・・・まさか・・・・まさかあいつは既に死んで・・・!くそっ!!警察は何をしているのだ!?」
 ちなみに彼は夜7時の時点で通報していた。さすが一輝、やることが早い。
 だが、待てど暮らせど警察からは何の音沙汰も無く、無駄に時間だけが過ぎるのみ。
「瞬・・・・!」
 苦悩がピークに達した、その時であった。
 玄関のドアがカタリと音を立てた。
「!?」
 光速ですっ飛んでいくフェニックス。しかし、玄関には期待した弟の姿は無く、ただ閉じたままのドアがあるだけだった。
・・・・・・・・いや。
 空だったはずの郵便受けの中に、白い封筒が一通。
「なんだこれは・・・・・・・」
 一輝はそれを開いた。
 そこにはかなりの達筆で、以下の様に記載されていた。


親愛なる一輝へ。
君の弟君は預かった。
帰して欲しくば
乙女座の聖衣を継承しろ。

君を望む者より。


「奴かあああああああっっっ!!」

 この夜、ご近所の皆さんは、兄弟宅から巨大な火柱が上がるのを目撃したという・・・



 翌日。ギリシア聖域。

ムウ「む・・・・かつて無いほど攻撃的な小宇宙が近づいてきている・・・・・!」

  ゴゴゴゴゴオオオオオオンン・・・・(注:一輝登場時の効果音by原作)

一輝「ムウ・・・久しぶりだな」
ムウ「一輝!?一体どうしたというのです、その鬼のような顔は・・・・」
一輝「話は後だ。そこをどけ」
ムウ「・・・・・理由を聞かなければ通すわけには行きません。何があったのです」
一輝「お前には関係の無いことだ!俺はシャカに用がある!というか、あいつ殺す!!

 登場時はいつも怒りモードだが、今回はいつにも増して殺気立っている一輝は強引にムウを押しのけて前へ進もうとした。だが、

ムウ「一輝!」

 とっさにムウが仕掛けたテレキネシスにつかまり、その場で硬直を余儀なくされる。

一輝「くっ・・・・グググッ・・・・!」
ムウ「落ち着きなさい。仲間を殺されるとわかっていて、この白羊宮を素通りさせるほど私も甘くはありませんよ。・・・まあシャカならそんなに簡単に殺されやしないでしょうが・・・。さあ、一輝。ここに来た理由を言いなさい」
一輝「い、言ったはずだ。お前には関係が無いことだと!」
ムウ「こんな所で意地を張っていてもしょうがないでしょう・・・・永久に動けないまま放っておかれたいのですか?」
一輝「くっ・・・・・」

 一輝は悔しそうに顔を歪めたが、どうしようもない。やがてあきらめたか、普段から渋い顔をさらに渋くさせて事情を語った。
一輝「シャカが・・・・瞬を人質にとって乙女座の聖衣を継げと脅迫してきた」
ムウ「・・・・・・・・・」

 さすがに一瞬沈黙するムウ。

ムウ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんなに聞かなきゃ良かったと思った話は初めてです」
一輝「だから言っただろう!!お前には関係ないことだと!!さっさと金縛りを解け!!」
ムウ「まあ待ちなさい。別に解いてもいいですけど、このまま君を素通りさせればアルデバランからアイオリアまで、通り道の方々に迷惑がかかるだけです。自宅を戦場にされるのは嫌ですが、仕方ありません。仲間からヒンシュク買うよりマシですからね。今、シャカをこちらへ呼んであげますよ」
一輝「くっ、余計な世話だ!さっさと俺を放せっ・・・!」

 しかしムウは怒鳴る一輝をはいはいと適当にあしらい、勝手に処女宮とテレパシー通信をかわしてしまった。

ムウ「・・・・・・・・・すぐに来るそうです」
一輝「あの野郎・・・・会った瞬間に『俺の心の怒り』を食らわせてやる・・・・!」
ムウ「・・・・なんでもいいですけどね。ただ、シャカは言っていました。『身に覚えが無い』と」
一輝「嘘に決まっているだろう!!」
ムウ「どうですか・・・彼はこのテの嘘をつくような人間ではなかったと思いますよ」
シャカ「そうとも」
一輝「!!」

 突然の降って沸いた声に、一瞬小宇宙を爆発させかける一輝だったが、当の相手はまさに「ぬけぬけ」という言葉がぴったりあてはまるほど、恐縮も遠慮も感じてはいないようだった。

一輝「シャカ!貴様ああああっ!!」
シャカ「あいかわらず喧しい男だな、一輝。私を誘拐犯扱いするとはいい度胸だ。そんなに引導渡されたいのか?」
一輝「フッ、笑止!貴様、自分が無実だとでも言うつもりか!?」
シャカ「無論だ。このシャカ、欲しいものを手に入れるのに脅迫などという面倒な手段はとらん。考えても見たまえ。私の場合、アンドロメダをさらうぐらいなら、君を直接さらうとも」
一輝「・・・・・・・・そのでかい態度がカンに障るが・・・・・説得力は妙にあるような・・・・」
シャカ「少しは理解してくれたかな?では、大地に頭をすりつけてこの私に詫びろ。そうすればこの濡れ衣、許してやらんことも無いぞ」
一輝「・・・・・いや、もはや犯人云々以前の問題で貴様を殺す!!」
ムウ「やめなさい一輝。シャカのこの性格は今に始まったことではないでしょう。それより、真犯人を見つけることが先決ではないですか」
シャカ「ムウ。私に対して、なにか文句でも?」
ムウ「気にしないで下さい。言っても無駄なことは言わない主義です
シャカ「フッ、大層な主義だな。相変わらず利口に生きている。羨ましいことだ」
ムウ「あなたこそ、私に何か不満でもあるのですか?ありそうですね」

 穏やかな顔を見合わせつつ、じりじり間合いをとる二人の黄金聖闘士。
 
シャカ「・・・・・・・・いくかね?ポトリと」 
ムウ「どちらかが消滅することになりますよ。それでもよろしいか」
一輝「おい。元凶の俺が言うのもなんだが、そういう私怨で千日戦争するのは大人げ無いぞ・・・」

 さり気なくツッコむ一輝。
 白羊宮内の不穏な小宇宙は今や爆発寸前まで高まっていた。
 その時である。

???「邪魔をするぞ」

 入り口から聞こえてきた、聞き覚えのある声に、三人は一斉に振り向いた。

ムウ・一輝「ラダマンティス!?」
ラダ「久しぶりだな、ムウ、フェニックス。・・・・・・そしてあと一人(←彼はシャカとの面識が無い)
シャカ「ずいぶんな挨拶だな。その趣味の悪い黒メッキからみるに、冥闘士のようだが?」
ムウ「久しぶりですねラダマンティス。もしかすると、私が冥界の穴に放り込まれたとき以来じゃありませんか?(笑顔)」
ラダ「・・・・・・・・・・・・・(汗)」
一輝「ムウ、シャカ。貴様らは黙っていろ。聖戦が再発したらどうする気だ。ラダマンティス。お前がこの聖域に、一体何の用だ?」
ラダ「あ、ああ」

 初対面の人間がいるにもかかわらず、ろくな挨拶もされない冥界三巨頭の一人。
 しかし、彼はこのての逆境には普段で慣れていた。

ラダ「フェニックスよ、お前に話がある。いや、話す間も惜しい。今すぐ冥界に来てもらいたいのだ」
一輝「何?しかし、悪いが今の俺にはそんな暇は無い」
ラダ「いいや、来てもらう!何がなんでも!とにかくお前ら兄弟とかかわるとロクなことが無いのだ!」
一輝「兄弟!?ということは、まさか瞬は冥界に・・・・」
ラダ「ああ。ハーデス様になっている
一輝「またかああああああっっ!!!くそっ!てっきりシャカだと思ったが、真犯人はあいつか!!だが、それならなんでハーデスが俺に乙女座の聖衣継承を要求しているのだ!?一体どういう事だラダマンティス!!」
ラダ「これ以上貴様に説明してやる義理はない!・・・・というか、正直いって、俺にもなんだかさっぱりわからん!!とにかく来てもらうぞフェニックス」
一輝「くっ、しかたあるまい」
 
 かくして、一輝はラダマンティスと共に冥界へと旅立っていった。

ムウ「やれやれ・・・・・挨拶無しですか・・・・迷惑な客だ。ところで、シャカ。・・・・・・・・シャカ?」

 ムウが振り向くと、そこにシャカの姿はなかった。
 いつのまにか、彼は白羊宮から姿を消してしまっていたのである。


冥界。いきなりジュデッカ。

一輝「瞬!!」
ハーデス「うろたえるなフェニックス。今は瞬ではなく、このハーデスが体を支配しているのだ。もっとも、完全に同化しているわけではないから、その点は安心できよう」
一輝「できるか馬鹿者!!返せ!!今すぐ俺の瞬を返せ!!」
ハーデス「返してやってもいいが、条件がある」
一輝「乙女座の聖衣を継げというのだろう!?」
ハーデス「そうだ。それも一つ」
一輝「・・・・・・・・・ひとつ?」
ハーデス「もう一つ、余にとってはこちらの方が重要なのだ。落ち着いて話を聞け」
一輝「・・・・・どうして俺にかかわる人間はこう、どいつもこいつも態度がでかいのか・・・・」
ラダ「・・・・・・・・・お互い様だと思うが・・・・」
ハーデス「私語は慎め。・・・そもそも、余の望みはただ一つしかなかった。フェニックス、お前をパンドラの夫にすること。これだけだ」
一輝「まだ言ってるのか貴様!!(注・「神々の首脳会議」参照)。いい加減にしろ!!俺は・・・・・!!」
ハーデス「聞けといっている。・・・お前をなんとしても婿入りさせたいと思った余は、直接言っても無駄なので、ここは搦め手から攻めることにした。シャカを懐柔しようと考えたのだ」
一輝「う・・・・・・・・(汗)」
ハーデス「しかし、あの男は頑として、『そんなわけのわからんコブを私の養子につけるわけにはいかん』と譲らぬ」
一輝「誰が養子だあああっ!!!」
ハーデス「余は昼夜を問わずシャカの説得に徹した。そしてようやく妥協案を出させるところまでこぎつけた。すなわち、『一輝に乙女座の聖衣を継承することを納得させたら、パンドラの夫にしても良い』と言わせたわけだ」
一輝「結局シャカのせいか。ふざけるなよ、なんなのだお前達は!!俺は聖衣も妻も欲しくはない!!ただ瞬がいればそれで良いのだ!!貴様こそさっさと理解して、二度と俺達にかかわってくるな!!」
ハーデス「・・・・なんかかなり問題発言な気もするが・・・・・しかし、実はすでにその瞬の方は説得済みなのだ。話してみるか?」
一輝「な、なんだと!?」
瞬「う・・・・・あ、に、兄さん?」
一輝「瞬!瞬なのか!?」
瞬「兄さん、ごめんなさい、僕はいつも足手まといになってばかりで・・・・・」
一輝「そんな事はどうでもいい!さあ瞬!今の内に逃げるぞ!!」
瞬「だめだよ。体は動かないんだ。・・・・ねえ兄さん、僕、最初は兄さんとパンドラさんが一緒になること嫌だったけど・・・ここで少し話をする内に、段々わかってきたんだ。あの人、すごく可哀相な人なんだよ。それに、悪い人じゃない。兄さんのこと、すごく好いてくれてるんだ。だから・・・・」
一輝「・・・瞬。いくらお前の勧めでも、こればっかりはボランティアでやるわけにはいかんのだ。あきらめてくれ」
瞬「そんな・・・一体、兄さんは彼女の何が気に入らないんです?」
一輝「気に入る気に入らないの問題ではない!!俺には忘れられない女がいるのだ!!」
瞬「それって、エスメラルダのこと・・・?もう死んじゃった人だよ兄さん!!」
一輝「わかっているさ・・・・だが、彼女は俺の中で永遠なのだ!あれが俺の好みなのだ!それに、ぶっちゃけた話、今の俺にはパンドラよりも瞬、お前の方がよほど大切だ!!わかってくれ・・・・頼む!!」
瞬「兄さん・・・・・!!」

 例によって例のごとく感極まりピークに達する兄弟。
 その背後で、突如「ガタンッ」という音がした。

一輝「!誰だ!?」
ラダ「はっ!パ、パンドラ様!!

 柱の影から一部始終を聞いていたらしいパンドラは、その瞳いっぱいに涙を浮かべていた。

パンドラ「一輝・・・・おまえは・・・・・・私のことなど・・・・・・・・・・・っ!」
 
 そのまま顔をふせ、背中に絶望の色をうかべて走り去る。

ラダ「パンドラ様!!っ貴様ああああっフェニックス!!パンドラ様を泣かせるとはどういう了見だ!!追え!!今すぐ追って慰めろっ!!」
一輝「とってつけた優しさなど、ますますあいつを不幸にするだけだ」
ラダ「それが15のガキの言うことか!?貴様はしらんのだ!!あの方がどれだけ心を痛めておられるか・・・どれだけ優しく、そして強い方か!!」
一輝「・・・・・・・そんなに言うなら、お前が行って慰めればいいだろう」
ラダ「それができれば苦労はせんわ!!だが俺では駄目なのだ!!くっっ、フェニックス、俺は貴様が心底憎い!!」
一輝「・・・・どうしてこんなわけのわからん三角関係のまっただなかに放り込まれねばならんのだ・・・・」
ラダ「フェニックス、貴様は・・・・!ちぃっ!パンドラ様ーっ!!」

 結局、ラダマンティスはパンドラの後を追って駆けていった。

ハーデス「・・・・・・・あいつも不幸な男よ
一輝「ああ、その一言で片づけられるあたりがな。ハーデス。俺を説得する暇があったら、むしろパンドラを説得してラダマンティスの嫁にすればいいのではないか?」
ハーデス「それではパンドラが可哀相だろう。長年苦労をかけたと思えばこそ、そのささやかな望みをかなえてやりたいのだ」
一輝「・・・・まったく同じ事がラダマンティスにも当てはまると思うのだが・・・・まあいい。それはそうと、いい加減に瞬を返せ。嫌だというなら、俺にも考えがあるぞ」
ハーデス「ほう。考え?力づくとでも言う気か?フ、青銅の小僧一人に何ができるというのだ?」
一輝「力づくではない。貴様がどうしても瞬をかえさんというなら・・・・・」
ハーデス「いうなら?」
一輝「・・・ハーデス貴様を俺の嫁にする」

 ・・・・・・・・・瞬間、冥界の深淵よりもなお深い沈黙が二人の間に落ちた。

ハーデス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なん・・・・と言った?今」
一輝「貴様を俺の嫁にするといったのだ。冗談でも嘘でもない。俺は本気だ」
ハーデス「ばかな・・・!」
一輝「言ったはずだ。俺の好みはエスメラルダだと。そしてパンドラよりは瞬の方がよほど大切だと!ならば、瞬の体を持ちエスメラルダともうりふたつな貴様を娶るのに、このフェニックス、もはやなんのためらいも無い!!」
ハーデス「うっ・・・・・」
一輝「さあどうするハーデス。おとなしく瞬を返すか・・・・それともこの場で俺の嫁になるか!」
ハーデス「・・・・・・・・・・・・・・(滝汗)」

 ・・・・・・・・・・その問に、ハーデスがなんと答えたかは定かではない。
 だが、その一時間後、無事取り戻した瞬を抱えてジュデッカを後にする一輝の姿があった。
 そして・・・・・


翌日。聖域。

ムウ「・・・・・・・・ああ、またこの攻撃的な小宇宙ですか・・・(諦め)」

 ゴゴゴゴゴ。

ムウ「一輝。アンドロメダは無事に取り戻せましたか?」
一輝「ああ、瞬は帰ってきた。しかし重要な問題がのこったのでな。ムウ。連日ですまんが、今日こそはここを通してもらう。全ての元凶がやはりヤツだったと分かった以上、俺は何としてもシャカを殺す!!
ムウ「私ももう止めはしませんけどね・・・・・・・でも、昨日あなたが去った直後に彼は雲隠れしてしまって、今は聖域にいないんですよ」
一輝「逃げたかあの野郎・・・・
ムウ「インドのガンジス流域にでも引きこもっているんじゃないでしょうか。・・・・・まあ、頑張ってくださいね」
一輝「・・・・ああ。邪魔をしたな」
ムウ「まったくです。当分来ないで下さいよ。それでは」

 灼熱の小宇宙を漲らせながら去っていく一輝。
 それと入れ違いに、反対側の入り口から飛び込んでくる姿がある。

ミロ「ムウ!昨日からここにわけのわからんものすごい小宇宙が出入りしているが、何があったのだ!?」
ムウ「・・・・・・・あなた、また勝手に天蠍宮をぬけてこんな所まで・・・・・・・」
ミロ「問答無用!敵はどこへ行った!!」
ムウ「敵じゃないんですよあれは。たぶん、ガンジスに向かったと思います。もう来ないでしょう。安心してください」
ミロ「?そうか?・・・・・なら俺は戻るが・・・」
ムウ「・・・・・・・・・・・」
ミロ「どうした?」
ムウ「いえ。なんか、あなたを見ていると妙に和むので」
ミロ「?」
ムウ「一緒にお茶でもどうです?ご馳走しますよ」
ミロ「あ、ああ。ありがとう」

 聖域に平和が帰ってきたその頃、瞬はハーデス憑依のショックからたちなおってようやく目を覚ました。
 彼が寝かされていたのは自宅・・・・・・・・があった場所。
 今は焼けこげた瓦礫の山になっているが。
 茫然と佇む少年。そこへ、ご近所のオバサンの声がかかる。
 
オバサン「あら!あんた瞬君じゃないのぉ!どこ行ってたの?お兄さんが心配して・・・・・あ、ごめんなさいね」
瞬「え!?あ、あの、どうしたんです!?なんで泣いて・・・・!」
オバサン「何も知らないのね・・・・実はね、あなたが留守にしている間、昨日の夜のことなんだけど、原因不明の大爆発があったのよ。それ以来・・・・一輝君が行方不明で・・・・・」
瞬「・・・・・・・・・・兄さん・・・・・」

 さめざめと涙を流すオバサンを前にして、ただただ沈黙するしかない瞬。
 今回最大の貧乏くじを引いたのは、他の誰でもない彼であった。


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