第6戦・・・の前にちょっと聖域

氷の壁が取り払われたのは大分たってからだった。

カミュ「うぅ・・・・氷河、見事だった・・・・・アイザック、今迎えに行ってやるからな」

 感動映画上映後の観客のような状態で出てきたカミュは、そのまま鼻をすすり上げながらどこへともなく去っていった。(たぶんアイザックの出迎えだろう)
 彼のあまりの湿っぽさに、仕返しを考えて盛り上がっていた私たちもただ後ろ姿を見送るのみである。

デス「・・・・・あいつ、よくあんなんで黄金聖闘士になったな・・・・」
シュラ「あれで二十歳・・・・間違っている。明らかに何かが間違っている・・・」
ロス「そんな事より、チャンネルをもどせ!聖域はどうなった!?」
シュラ「ああ、そうだった。しかしかなり時間も経ってしまったし、いまさらさっきの問題まで戻るかどうか・・・」

 望み薄ながらチャンネルを聖域に合わせる。
 するとまたしても、蠍の絶叫から場面が始まった。

――――――――バカな!最初から星矢達に死んでもらうつもりだったとはどういう事だ!!

デス「見事に戻ったな」
シュラ「うむ。まるで画面カット中、なんの進展も無かったみたいだ。本当にミロは貴重な存在だな」
シオン「っていうか、お前らにとってのミロの位置って一体・・・」

 白羊宮に駆けつけたのはミロだけではなかった。その後ろに、シャカとアルデバランの姿も見える。
 「お前らまで来たのか」といいたげなムウとアイオリアに、ミロが言った。

――――――――ポセイドン神殿はこの聖域とは目と鼻の先の地中海下にあるという。俺達黄金聖闘士全員とは言わなくても、このミロとアイオリアの二人だけでも乗り込んでいけば七将軍など物の数でもないはず。

アフロ「さり気にアルデバランをはずしたな」
サガ「そういう見方をするな・・・;」
デス「なあ、率直に言ってアイオリアとミロで七将軍、倒せると思うか?」
シュラ「蟹が行くよりは・・・
デス「・・・・・なんか今日、いちいちつっかかるなお前・・・」
ロス「喧嘩はするなよ!まあアイオリアとミロなら、突っ走り易い二人組だし、結構秒殺出来るかも知れん。ていうか、カーサ辺りなら間違いなく変身前にぶっ殺されていただろう・・・・スキュラのイオも、初っ端の女の幻影やってる暇はないかも・・・」
アフロ「風情の欠片も無い二人組だな。そこがあいつらのいいところであり、暑苦しいところでもあるのだが」

 聖域では、ミロの「一体老師は何を考えておられるのだ!?」をきっかけに、なんだかよく分からない疑いを童虎にかけはじめたようだった。
 シャカよ。「ま・・・まさか老師は・・・」って、そんな意味ありげな台詞を飛ばすのなら、頼むから最後まで言い切ってくれ。
 童虎も、何もこのタイミングで目を光らせること無いだろう・・・真犯人と思われても文句の言えない怪しさだぞお前・・・

デス「なんだ?老師が目ぇ光らせてるけど、なんか企んでるのか?」
シオン「いや、そういう気分だったのだろう。あいつのことは私がよく知っている。別に悪気があるわけではない」
サガ「そう言えば、教皇は老師と昔からのお知り合いなのでしたね」
シオン「知り合いというか腐れ縁というか・・・あいつは昔から変わらんな。まあ正直言うとあそこまで縮むとは思っていなかったが、心はいつまで経ってもアテナの聖闘士だ」
ロス「・・・・・・・その割には聖衣以外役に立っていないような気が・・・・・」
シオン「・・・・・・・・それは言うな」
サガ「聖衣といえば前から不思議に思っていたのですが、老師はあの体で聖衣を着られるのですか?想像つかないのですが」
アフロ「いや、結構可愛いかも知れん。ミニガンダムみたいで」
シュラ「俺の予想では、着るというよりも合体時の聖衣(天秤型)の中にそのまま収納できるのではと」
シオン「・・・・お前ら口を慎めよ。240年の大先輩に対して・・・・」
デス「240年・・・そこまで行くと『先輩』ってより、すでに『先祖』の域に達してる気が・・・」

 ちなみに240年前というと、日本では江戸時代の真っ盛りである。

デス「江戸時代・・・・・一体何してたんだ老師・・・」
シオン「今にわかる。それより、海底神殿の様子はどうした。チャンネルをかえろ」

 いろんな意味で老師疑惑が深まる中、テレビの画面は再びポセイドン方面に戻された。
 ・・・・まあそのうち・・・・・老師の長寿の意味も分かる時が来るだろう。
 あまり歓迎できたことではないが・・・・・


第6戦 VSシードラゴン

 一輝兄さんは行く。「俺はあくまでもポセイドンの首を先にあげてやる」と独りごちながら。

デス「待て。お前らの本来の目的はアテナを救うことではないのか?ポセイドンの首など何の役にも立たんぞ!」
サガ「突然出てきて方向性を見失うところはさすがだフェニックス・・・そもそもいきなりポセイドンにアタックしようなどとは発想からして違う。星矢達は案内された通り柱を砕いているし・・・・」
アフロ「どちらが正しいかはこの際置いておくとしても、どちらが人間の有るべき姿かといえばフェニックスの方が平均値に近いのではないか?敵に言われた通りのコースをたどっているその他馬鹿正直というかカモというか・・・」
シオン「星矢達は既にその他扱いか・・・・おまえら死んでも偉そうな態度は変わらんのだな」

 さて、単独で突っ走る兄さんの前に、今また新たな敵が姿をあらわした。

――――――――残念だがポセイドン様のもとへは行かせん。このシードラゴンがな。

 ん・・・・?

シオン「なんか、聞いたことのある声ではないか?」
シュラ「確かに・・・・初めに出てきた時から気になってはいたのですが」
サガ「・・・・・・・」
アイオロス「?どうした?具合でも悪いのか?」
サガ「い、いや・・・なんでもない」

 こちら側ではサガの様子がなんとなくおかしくなっているが、テレビの向こうでは一輝の様子がおかしくなっていた。
 息が上がって、一歩も動けない状態だ。
 
デス「おい、一輝の奴、シードラゴンに完全に威圧されてるぞ。まずいんじゃないか?」
アフロ「まずくないわけがないだろう。む!シードラゴンが技を・・・!」

――――――――ギャラクシアンエクスプロージョンーーーーー!!

・・・・・・・・・・

シュラ「・・・・・今の技は・・・・・・」
デス「おい、サガっ!なんだ今のは!?あれはお前の弟子か!?」
サガ「ちっ、違う!弟子など取ったことはかつて一度も・・・・!」
シュラ「ではなんなのだ。まさかお前、本当は死んでいないのでは・・・?」
サガ「死んでいる!こうしてお前達の目の前にいることが何よりの証拠だろう!?」
デス「じゃああいつは一体誰なのだ!お前何か知っているだろう!?吐け!!」
サガ「う・・・・・・」
デス「大体おかしいと思ったのだ、目のところが黒ベタなど!さあ白状しろ!アレは誰だ!」
アイオロス「待て!見ろ、シードラゴンがマスクを取るぞ」

 ゆっくりと取り外されたシードラゴンのマスク。
 その下から現れた顔は・・・・・!

――――――――や、やはり・・・・!だ・・・だがお前は死んだはず!!

 ジェミニのサガ!!

シュラ「やはり死んでおらんではないか貴様!!」
サガ「違う!アレは私ではないのだ!!あれは・・・・あれは私の、双子の弟だ!!」
デス「誰が信じるかそんな嘘くさい話!!いい加減にしないと黄泉比良坂に落とすぞテメエ!!」
サガ「本当なのだ!!本当にあれは弟で・・・・!」
アフロ「ならなぜ最初からそう言わないのだ。声を聞いた時点で判別がついていたのだろう?」
サガ「し、しかしそれこそあいつは死んだはず・・・・というか長い間行方不明で・・・・それに」
デス「やめろ!どっちにしろデタラメだろうが!!」
サガ「デタラメではない!くっ、テレビを見ていればそのうちわかる!」

――――――――ば・・・馬鹿な・・・・おまえがどうしてここに・・・・
――――――――フッ、サガだと?あんな愚か者の兄と一緒にするな。
――――――――な・・・なに、兄・・・?す・・・するとおまえは・・・・
――――――――そうだ。俺はサガの弟!ジェミニのカノン!!

 ・・・・・・なるほど。確かにサガの言う通り、あれは双子の弟だったらしい。
 しかし・・・・

一同「・・・・・・・・・・・・・・(冷たい視線)」
サガ「な、なんだその目は・・・フッ、お前達の言いたいことはわかっているぞ。どうせ俺達兄弟を心の底から悪役だとでも思っているのだろう!?絶対そういう風に見られると思ったからあいつの正体を教えたくなかったのだ!!フッ・・・フフフ軽蔑しろ!!いくらでも軽蔑するがいいわ!!ウワーーーッハハハ!!!!(涙目)」
デス「・・・・完全に壊れたな」
アフロ「黒サガも覚醒してきたようだ。まあ・・・・こんな覚醒の仕方もどうかと思うが」
シオン「いい。放っておこう。兄弟そろって疫病神など、かかわらないに限る
シュラ「同感です

 カノンは自己紹介で、「自分は兄と違って悪の心一つしか持っていない」と言い放っている。

――――――――あ・・・悪の心のみの双子座のカノン・・・そ・・・そのお前が何故にポセイドンに・・・兄のサガが果たせなかった野望を、今度はお前が果たそうとでも言うのか・・・・

 そういう遺志を継ぐのはやめてくれ。
 まったく、迷惑極まりない。

――――――――これ以上は問答無用!息の根を止めてくれるぞ!
――――――――うっ!
――――――――・・・・・フッ、そう言えばお前はフェニックスの名の通り死地に陥っても幾度も蘇ってくるとか言ったな・・・ここで止めをさしてもまたもや蘇ってこられては面倒。

 カノンよ。またもや蘇ってくるような殺し方は、止めとは言わない。

――――――――ならばいっそのこと違う次元へ飛んでいってもらおうか。二度とこの世界へはもどって来られん場所へな。

デス「・・・・そういう所に飛ばされた方が、一輝はもどってくると思うがな」
シュラ「何と言っても十二宮でいきなり処女宮にワープしてきた男だからな。異次元程度ではやはりまずいのでは・・・」

――――――――ゴールデントライアングル!!

 一輝は飛んでいった。北大西洋の魔の三角形の中へ・・・・・
 「どうせすぐに戻ってくる」と信じて疑わない我々と、そこから外れて泣き笑いしつづけている兄に見守られていることもしらず、カノンはただ不敵な微笑みを浮かべて立っていた。


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