第6と3分の1戦・・・ VSマーメイドのテティス

 一輝が海へと消えた(違)その瞬間、誰よりも早く異変を察知したのは他の誰でもない、シャイナであった。

――――――――はっ!い・・・今、一輝の小宇宙が消えた・・・

デス「・・・・結構敏感な女だな」
アフロ「やめろ。君が言うとなんだかやらしい。シャイナは曲がりなりにも白銀聖闘士なのだから、仲間の小宇宙を感じ取ることなど造作もあるまい」

――――――――い・・・いや、一輝だけじゃない。星矢達青銅全員の小宇宙も感じなくなった・・・

シュラ「・・・・『造作もない』割には、他の者の異変に気づくのが遅い気がするが・・・・」
サガ「一輝の小宇宙は特別目立ったらしいな。わからんでもない」

 その目立ちすぎる小宇宙のおかげで、星矢達は影が薄くなっていたのだろう。

ロス「・・・・・なあ、ちょっと待ってくれ」
サガ「なんだ?」
ロス「何か引っかからないか?彼女の反応」
シュラ「ひっかかる?どういうことだ?」
ロス「いや・・・一輝はリュムナデス戦の時に降って沸いたわけだから、まだシャイナには会っていないわけだろう?彼女の立場に立って、ちょっと順を追って整理してみよう」

〜シャイナ視点の整理〜
  ・ポセイドン神殿でテティスと睨み合っている。
  ・突然、一輝の小宇宙を感じる。(兄さん飛び入り参加時)
  ・その小宇宙が爆発していくのを感じる。(兄さん戦闘時)
  ・その小宇宙が突然消える。(ゴールデントライアングル)

ロス「・・・・俺が彼女なら何をさて置いてもまず、何しに来たんだろうと考えるところなんだが・・・」
シオン「何しにって・・・アテナを助けに来たのだろう」
サガ「違いますよ教皇。弟を助けに来たんですよ」

 いや、それは本当に何しに来たんだ。

シオン「・・・・まあいい。消えた奴のことをとやかく言うのはよそう。シャイナとやらはどうした?」
シュラ「星矢達が死んでしまったと思って焦っているところです」

――――――――くっ!
――――――――どこへ行く、シャイナ!
――――――――知れたこと!こうなったらポセイドンをひっつかまえて奴自身にアテナを救わせるしかない!

デス「・・・微妙に一輝と考え方が似てないか?」
アフロ「それは失礼だろう、年頃の女性に・・・・;」

――――――――バカな!ポセイドン様の所へなど、行かせてたまるか!
――――――――どけテティス!これ以上おまえとやりあっている暇はない!!
――――――――うっ!
――――――――くらえ!サンダークロウ!!

カカァッ!!

――――――――うわああああーーーっっ!

 悲鳴を残して、テティスは石畳に顔から叩き付けられた。

ロス「・・・・・見た目テティスの方が可愛いだけに、これは痛々しいな・・・」
サガ「ああ。シャイナの仮面は恐いからな。女番長のシゴキっぽくて迫力が違う」
シオン「おまえらも失礼な男だな。そんなことを素面で言っているから28にもなって独身のまま終わったのだぞ、サガ」
サガ「・・・・・・・そういうあなたは248にもなって独身でしたよね」
シュラ「「いや、それは微妙に話が違う気が・・・」
アフロ「というか、横で聞いているととても歳の話とは思えない数値なんだが」

 悪かったな。

シオン「いいだろう!?人の歳のことなんかどうだって!この話はもうやめだ!」
デス「ネタふったのあなたですからね、教皇」

 ぼそっと呟く蟹のツッコミは無視して。
 海底では、シャイナが単身、ポセイドン神殿に乗り込むところだった。
 


第6と3分の2戦  VSポセイドン


 神殿の中は静まり返っていた。
 雑兵一匹見当たらない。

デス「これでポセイドンが既に死んでいたとかいうオチだったら笑えるな」
ロス「笑うなよ!皆、忘れていると思うが、一応今現在世界の危機なんだぞ!?」

 ・・・あ。忘れていた。

シオン「・・・いかんな。バラエティー番組ばかりみていると、ついつい時事にうとくなる」
ロス「だからバラエティーじゃありませんて!!教皇、これは真面目で深刻な番組なんです!!言ってみればプロジェクトX!!」
サガ「・・・お前も結構、自分と縁のない番組を見ているな、アイオロス・・・・」
シュラ「いや、それ以前にこれは番組ではないということに誰かツッこめ」

 そんなことを言いあっている私たちの前で、シャイナは神殿の最深部にたどり着く。
 彼女を阻む一枚の扉。この奥にポセイドンがいるはずなのだ。死んでなければ。

――――――ポセイドンといえどももとは海商王の単なるお坊ちゃん!何の戦闘訓練も受けたわけではない!

サガ「・・・お坊ちゃんはジュリアン・ソロであってポセイドンではない、というツッコミは有効だろうか・・・」
アフロ「迷っている時点で無効だろう。ツッコミはスピードが命だぞ」
サガ「むう・・・残念」
デス「・・・芸人にでも転向する気か?サガ・・・」

 絶対売れないだろうなと思ったが、それはどうでもいい話だ。(本当にな)
 今注目すべき海底神殿では、ちゃんとポセイドンが生きて玉座に座っていた。
 その「ビッグな小宇宙(シャイナ談)」に、威勢よく乗り込んでいった彼女はいきなり気おされている。
 ポセイドンが静かに口を開いた。

――――――――お前は誰だ?

 答えよ、と言って目を光らせたその瞬間、シャイナの仮面が真っ二つに割れて床に転がった。
 ・・・・・・・・・・・・・

一同「けっこう美人!」
シオン「・・・・・・・・・・・・」

 ポセイドンの力よりも、女の素顔に反応している黄金聖闘士達の姿が、「所詮彼らも男」という感じでなんだか淋しい。

アフロ「私ほどではないにしろ、あの顔であのスタイルならばかなりのものだ。普段から仮面などつけないでいればいいのに」
サガ「かよわい女性の身でありながら、己を律するために闘う・・・・健気な。まるで荒れ野に咲く花の様だ」
ロス「お前、さっき女番長と言ってたくせに・・・」
サガ「さっきはさっき!今は今だ!」
シオン「・・・要するに顔の問題、と・・・・お前の女ナシ人生の敗因がわかった気がする。それにしても、さっきまで泣いてたくせに随分開き直ったな」
サガ「フッ、カノンの存在がばれた今、もう何もかもどうでもいい気分ですから」

 沸き立つ一同の中で、ただシュラだけが当惑していた。

シュラ「なあ・・・女聖闘士が顔を見られるのは、その・・・裸身をさらすよりも屈辱だと聞いた覚えがある。こんなところで俺達が束になって見物していては、シャイナが可哀相なのではないか・・・?」
デス「堅いことを言うな。くそー、こんなことなら生きてるうちに口説けば良かったぜ」
シュラ「・・・・・・なんとなく悪すぎだぞデスマスク・・・・一度は見てしまったが、俺はもう彼女の素顔は見ない」

 シュラは画面に背を向けた。
 
デス「つまらん奴だな」

 と、デスマスクが笑う。

シオン「・・・・・・アイオロスよ。ものすごく両極端な二人だが、一般世界に出た場合、どちらが女にモテると思う?」
ロス「さあ、女性心理はわかりませんが、とりあえず片方は破滅型でもう片方は報われない型結局両方駄目ではないかと」
シオン「なるほどな・・・」

 聖闘士達の春は遠い。

アフロ「・・・・シャイナが倒れたな。『命そのものが引き抜かれて行くようだ』と言っていたが、一体どういう技なのか・・・神とはそんなに恐ろしいものだったのか?私の記憶では神=矢ガモぐらいの認識しかないのだが」
ロス「お前、さてはまだアテナに忠誠誓ってないだろう・・・;」
アフロ「さあな。まあ、あえてこれだけ言わせてもらうとすれば、矢が刺さっても動けるだけカモの方がマシ・・・」

 なんか・・・とんでもないことを言っているな・・・・(汗)
 しかしとんでもないことを言っているのはテレビの方でも同じだった。
 ポセイドン神殿でシャイナが返り討ちに遭った後、画面は変わってシードラゴンのカノンとセイレーンのソレントが登場している。
 「この戦、全てあなたの企んだことではないのか」とカノンを疑うソレント。
 「めったなことを言うと命がないぞ」と脅しをかけるカノン。
 かなり内部崩壊しかけている様子だが、どうもソレントの言う通り、全てはポセイドンではなくカノン一人の悪巧みによるものらしい。
 つい今し方まで「ほぼこのカノンの思惑通りに事は運んだわ」等と一人ごちていたし。

サガ「フッ・・・自分の仲間すら捨て駒に使って世界征服。さすがこのサガの弟」
シオン「言われる前に自分で言ったな。それはそれで痛々しいが、ついでに計画がずさんなのももっと痛々しいな」
ロス「確かに・・・『ほぼ思惑通り』というには、柱五本破壊されている現状況はちょっとトラブルありすぎだ。余裕に構えている場合ではないぞ、カノン・・・」
 
 だが、その時である。

――――――――むっ!なんだこの小宇宙は!
――――――――恐ろしく強い小宇宙が北と南の大西洋の柱へ向かっている!
――――――――バ・・・バカな!聖闘士は一人残らず息絶えたはずなのに!

デス「そういう誤算が死を招く、と・・・俺だって何回紫龍を殺したと思ったことか・・・・」
ロス「そこでお前が暗くなってどうする;」

――――――――ソレント!話は後だ、自分の守護する柱へ戻れ!

シオン「後で仕切りなおしたい話でもなかった気がするが。自分の正体バレそうになってたところだろう?」
ロス「しかも『大西洋の柱が砕かれたら海底神殿は完璧に崩壊』等と言ってる・・・やっぱりトラブルありまくりではないか、この計画」

 冷静にツッコミ続けるモニターの前で、二人の海闘士はそれぞれの持ち場へと急行していった。
 そして、切り替わった画面にうつる、直立不動で首まで水に浸かったアテナの姿。

アフロ「浮力をまったく感じない!なるほど、これが神の力か!」
シュラ「いや、それは違う」

 水の深さから見て、このまま行くと遠からずアテナは水没する。
 少しは泳いでねばって欲しいと思わずにはいられない私たちであった。


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