紫龍「春麗。この宮だが」

 と、双児宮を前にして紫龍は言った。

紫龍「一度入ったら二度と出てこられない可能性がある。それでも行くかい?」
春麗「ええ、もちろん」

 まったく動じない春麗。紫龍は溜息をついて彼女の手をとる。
 二人は昼なお薄暗い宮へ、後をも見ずに駆け込んでいった・・・・



 白、黒、白、黒。
 入ってまもなく、春麗はこの宮があきらかに今までの宮と違っていることに気づいた。
 空気が違う。肌に感じる物が違う。走るその向こうからまるで光と闇が交互に襲ってくるような、異様な感じに捕らわれる。
 足の下には確かに不揃いな石の床が存在しているのに、爪先は空を蹴ってでもいるかのようだった。
 春麗は思わず、繋いだ紫龍の手をきつく握り締めた。

紫龍「出口だ」

 下げていた視線を上に直す。
 目の前に日の光が迫っている。とすると、この宮には誰も行く手を阻む者がいなかったのか。
 春麗の背筋がかすかに震えた。ずっと、何かにつけられていたような気がしたのだけれど。
 足はがむしゃらに早く動いた。今にも後ろから襟首をつかまれそうで、春麗は紫龍を追い越し、手を握ったままほとんど彼を引きずるようにして出口へと飛び出した。




春麗「・・・・・どういうこと?」

という春麗の声は、紫龍にとっては予想していた問いであった。
 目の前にはたった今突破してきたはずの双児宮が再び立ちはだかっている。石段を下へと吹き抜けて行く風や、傾いた日差しの静けささえもが、ついさっき到着したばかりの時とまるきり同じだった。
 彼は胸につかえていた息を吐き出して答えた。

紫龍「双児宮は双子座の迷宮になっているんだ。主はサガというんだが・・・彼が通してくれる気にならない限り、俺達は何度宮を通り抜けても元の入り口に出てしまう」

 春麗は眼を丸くした。

春麗「そんな・・・・その人はどこにいるの?通してくださいって頼むことはできないの?」
紫龍「俺達が以前戦いでここを抜けようとした時には、サガは一番上の教皇の間にいたんだよ春麗。今回もそうなら、双児宮を突破しない限りサガには会えない」
春麗「・・・そう。でも、突破できたら会う必要も無いわね」
紫龍「ああ」
春麗「サガって言う人は・・・私たちがここに来ている事も知っているのね」
紫龍「おそらくどこかで見ているんだろう。黄金聖闘士の超能力は色々凄まじいからな」
春麗「・・・・・・」

 瞼を閉じて押し黙る少女。その脳裏にはきっとデスマスクの面影・・・・のかなり美化された映像が映っているのだろうと、ほんのり染まった頬を見ながら紫龍は思った。

紫龍「春麗・・・」
春麗「・・・わかったわ。行きましょう、紫龍」
紫龍「行くって・・・もう一度、双児宮に入るのか?」
春麗「ええ。大丈夫、私に考えがあるの。さあ、早く」

 胸を何かの影についと撫でられたような不安を感じた。ここ聖域に到着してから、春麗の可愛らしい頭に浮かぶ考えはあまり穏便だとは言い難い。いや、はっきり言って危険極まりない。

紫龍「・・・。どんな考えだか教えてくれないか?」
春麗「え?考え?・・・・えっと・・・・・・うふふ、ひ・み・つ!
紫龍「・・・・・・・・」

 乙女の必殺技でそれ以上の追求を封じられた紫龍。嫌な予感は前にも増して高まったが、彼にできることはただ妙にうきうきとはしゃいだフリをしてるっぽい春麗に腕を引っ張られるまま、双児宮へ突進して行くことだけだった。




 再び双子座の迷宮が二人を飲み込んだ。白と黒、光と闇がかわるがわるに肌を撫でた。
 冷えた空気を裂くのは自分たちの駆け足の音のみ。
 出口はもちろん入り口さえも遥か後方に見えなくなってしまい、永久に走り続けなければならない錯覚に囚われそうになった、その時だった。
 春麗が唐突に走るのをやめた。

紫龍「どうしたんだ?春麗。足をくじきでも・・・・」
春麗「ううん、ちがうの。・・・・もういいのよ」
紫龍「・・・『もういい』?」

 一瞬、デスマスクをあきらめてくれたのかと希望的観測をしてしまった紫龍だったが、すぐに希望的なことは希望に過ぎないのだと思い知ることになった。
 春麗がこう言ったので。

春麗「ええ。どのみちこのまま走り続けても入り口に帰されるだけ・・・・。そんな無駄足踏むぐらいなら、いっそ中でハンガーストライキしましょう。ね、紫龍」
紫龍「う・・・・・っ」
春麗「双児宮のサガさん!私たちのことを見ているんでしょう?私は本気です!デスマスクさんに会えないなら死ぬ覚悟でここまで来たの!通してくれないならこの宮に骨を埋めます!!」
紫龍「し、春麗。他人の家でそういうことはあまり・・・・」
春麗「他人の家ですって?ここはお墓よ、あなたと私の。あなたはここから出ることも出来ずに私と死ぬの」
紫龍「春麗・・・・;」

 滅びの言葉を唱えられるものなら紫龍は唱えたかった。しかし双児宮は天空の城ではない。
 仕方なく、彼もまた虚空に向けて呼びかけるのだった。

紫龍「サガ。すまない、ここを通してもらえるだろうか。貴方達に迷惑をかけているのは本当に申し訳ないが、俺はもう金牛宮の悲劇を繰り返したく無いのだ。デスマスクに会ってきちんと話をしたい。あと・・・・一応、バルス」

 すると、呪文に応えたわけでは無いだろうが、暗闇にすっと人影が浮かび上がった。
 息を飲む紫龍と春麗。まさか本当にデスマスクが・・・・・
 ・・・しかし現れたのは彼では無かった。

紫龍「サガ・・・・?」
カノン「あいにくサガではない。あんな薄情者と一緒にするな」
紫龍「カノン!?どうして・・・・」
カノン「どうして俺がここにいるか、か。俺も聞いたものだ。どうして俺がこんなことに巻き込まれねばならんのだサガこのクソ野郎、とな。返事はこうだった。自分は教皇の間から出て行きたくないがこの問題に黄金聖衣を行かせるのももったいない。故に悪いがお前に代わりに行ってもらいたいのだカノンこのドクソ野郎、とな。わかったか?あいつにとって俺は聖衣以下の存在なのだ!この答えで満足か紫龍!!
紫龍「いや・・・・正直大変申し訳ないと思うが・・・・俺は貴方がなぜここにいるのかより、貴方がなぜ前髪を全部上げてオールバックにしているのかという方が気になっている。なぜなんだカノン・・・似合って無いぞそのカチューシャ
カノン「これか」

 カノンは手を上げて自分の額に触れた。その顔は何故かやや得意げですらあった。

カノン「話によれば蟹がその娘に惚れられたそもそもの原因は、前髪があったことだと言うではないか。そこで俺は万が一の事態を未然に防ぐべく対策を施してきたというわけだ。どうだ!」
紫龍「どうだと言われても・・・」

 いくら春麗でもそんな希薄な動機でデスマスクに落ちたりはしないだろう。しないで欲しい。紫龍は半ば祈るような気持ちで幼馴染を振り返り、視線で反論を求めた。
 自分にとって何よりも大切である少女が、前髪次第で誰にでも恋してしまうような安易な女性だと思われるのは嫌である。
 すると春麗はそんな紫龍の気持ちに気付いたのか、大丈夫よというように微笑んで見せた。
 そして、

春麗「やあね、これだから男の人って単純。前髪があったかどうかなんて関係ないわ。女の子はね、最初は無かったのに突然あったっていうギャップに心奪われる物なのよ」
カノン「な、何!?そうすると俺は自ら前髪を上げてしまったことによって既にフラグを立ててしまったということか!?」
春麗「カノンさん、だったかしら?あなたはもう私の術中に嵌ったも同じなの。乙女心をときめかせたくなければ、そのカチューシャは取らないでいることね」
カノン「くっ・・・・・!!」

 痛恨の呻きをもらすカノン。勝ち誇った表情の春麗。二人の間では紫龍がツッこむ気力も無くして遠い目をしている。今一番人のギャップに心奪われているのは誰よりも彼である。

春麗「わかっていただけたら、ここを通してください。私は無関係の方まで傷つけたくはありません」
カノン「傷つけているのがわかってるならもうやめたらどうだこんなこと」
春麗「女の子はね、恋をしてしまうと・・・一度夢中になってしまうともう止まれないの。ソックスはルーズになるし、スカートは腰蓑になるし、爪は猛禽類になるの。伸びすぎたネイルアートで誰が傷つこうと、そんなことはどうでもいいわ。たぶん、彼氏が止めたぐらいじゃ誰もやめないわ」
カノン「それはもう恋でも何でもないんじゃないのか」
春麗「男の方に全てを理解してもらえるとは思いません。私はただ、この一時だけあなたに身を引いて欲しいだけです。お願い・・・!」
カノン「・・・・・・」

 しかし、カノンはその願いに対し、目をわずかに細めて背をぐっと起こした。拒絶の意思である。
 よく伸びた体躯と極めて整った顔を持つこの男がそうして姿勢を正すと、たとえカチューシャをつけていたとしても他を圧するには十分な迫力が生まれた。

カノン「生憎だがその願いは聞けんな。お前達を先へ通せばサガが激怒・・・・もとい、俺の役目はお前達をこの聖域から出て行かせること。蟹に会いたいからといわれてはいそうですかと通すようでは、今頃十二宮は黄金聖闘士のファンクラブに占拠されているだろう。道をあけるわけにはゆかん」
春麗「・・・どうしても、ですか?」
カノン「どうしてもだ。お前達こそ、ここから退く気はないのか?」
春麗「ありません!」
カノン「・・・断っておくが俺は強い。相手が女だからといって容赦をするタチでもない。退かぬというなら力で退かせることなど容易いことだ。それでも答えは変わらんか」
春麗「変わりません。絶対に」
カノン「・・・・。よくわかった」

 男が低く呟いたのと同時だった。
 ぐ、と耳には捉えられぬ異様な音がし、辺りの景色が歪んだ。

カノン「それだけの覚悟があるならもはや何も言うまい。次元の彼方に消えてもらうぞ」
紫龍「!!ま、待てカノン!!春麗は・・・・!」
カノン「問答無用!!食らえ、ゴールデントライアングル!!!」

 歪みが爆発した。

春麗「きゃああああああっ!!!!!」
紫龍「春麗ーーーーっっ!!!!」

 すさまじい力の前に、無防備な少女とその幼馴染はなすすべもなく飲み込まれていく。
 だがしかし。

紫龍「うわああーーーーっ!!!」
春麗「し、紫龍、私の手に捕まって!!
紫龍「!!?」

 異次元に吸い込まれながらも紫龍が懸命に目を見開けば、そこには何故かかろうじて力の本流に巻き込まれず、耐え忍んでいる春麗の姿があった。

紫龍「春麗!?馬鹿な、君は一体どうやって・・・・!?」
春麗「三つ編みよ!!三つ編みが命綱になって助けてくれているのよ!紫龍、あなたも早く、髪の向きを変えて!!
紫龍「できるかああああああっっっ!!!!」
春麗「何を言っているの!?老師の直伝の技よ!?あなた何のために今まで髪を伸ばしていたの!?
紫龍「それは俺が君に聞きたい!!っ、くっ・・・・もう・・・・う、うわああーっ!!次元の彼方に吸い込まれるーっっ!!!
春麗「紫龍・・・・!!シリュウゥゥゥゥゥっっっ!!!」

 紫龍の姿は歪んだ異空間の向こうに、小さく消えていった。
 それを見送ったとほぼ同時に、フッと春麗の体は軽くなる。

春麗「!!」

 ドサッ
 落ちたところは、石畳の床の上。
 もといた双児宮のそのままの場所だった。

春麗「・・・・助かった・・・・の・・・・?」
カノン「三つ編みに助けられるとは運のいいヤツ・・・・・いや、運がいいとか悪いとかいう問題でも無い気がするが・・・・三つ編みに助けられなければお前も紫龍と同じ運命になっていたものを」
春麗「し、紫龍は!?紫龍はどこへ消えてしまったの!?」
カノン「言っただろう。次元の彼方に消えてもらうと」
春麗「次元の、彼方・・・・?」
カノン「そうだ。もはや抜け出ることのできない異次元を、紫龍はこの先ずっと漂い続けるのだ。未来永劫、永遠にな」
春麗「そんな・・・・・」

 呆然とする春麗。
 カノンはそんな少女の様子を冷えた視線で眺めやりながら、

カノン「少しは目を覚ましたか?小娘。お前が蟹をどう思おうが俺の知ったことではないが、お前がしていることはお前の周りの人間を命の危険に晒してさえいるのだ。蟹のためにそこまでする必要があるのか?蟹の身に何かが起こっているというなら話はまだわかる。しかし蟹はお前から逃げているのが現状だ。お前のこの強行軍を、当の蟹ですら歓迎していないのだぞ。そんな蟹のために、紫龍を犠牲にして、本当にお前はそれでいいのか?」

 この男にしては珍しく、淡々とした口調で諭す。
 春麗の口がきゅっとへの字に曲がった。

春麗「ひど・・・・い・・・・・・」
カノン「俺は事実を言っているだけだ」
春麗「ひどい・・・・ひどいわ・・・・っ!」
カノン「何がひどい?言いたいことがあるなら聞いてやる。聞くだけならな」

 カノンはほとんど呆れた口調で腕を組み、斜に構えた。
 春麗はそんな彼を涙のたまった目で睨んで立ち上がる。震える足でなんとか体を支え、両手を痛いほど握り締めて。
 そして、血を吐くような叫び声で、言った。

春麗「ひどいわ!!なんでデスマスクさんを蟹って呼ぶの!?」
カノン「そこか!!!?」

 予想外の糾弾に思わずひるんでしまったカノン。
 爆発した春麗はもう止まらない。

春麗「さっきから聞いていれば皆して蟹蟹蟹蟹って!!!デスマスクさんにはデスマスクさんっていうちゃんとした名前がありますっっ!!」
カノン「いやあれは本名ではな・・・・!」
春麗「どうしてそんな馬鹿にした呼び方するんですか!?」
カノン「馬鹿にって・・・!」
春麗「デスマスクさんに失礼だと思わないの!?」
カノン「し・・・・!」
春麗「貴方達なんか、デスマスクさんを庇ってるフリして、本当にあの人の事を考えてる人なんて一人もいないんだわ!!」
カノン「ちょ・・・・・!」
春麗「ひどいわ!最低よ!すぐ暴力ふるって男らしくない!!口で敵わないからって!だから男の人って嫌いなのよ!!デスマスクさんに会わせて!!紫龍を返して!!あなたなんか大嫌い、大っ嫌いよぉっ・・・・っ!」

 わああああっ!と、立ったままその場で泣き出す春麗。その言っていることはまったく辻褄があっておらず、矛盾もしまくっていたが、それだけにカノンは口を挟めない。
 わんわん泣く少女を前に、「おい!」「泣くな!」「聞け!」などの呼びかけをしても、一切相手にしてもらえず、彼は思わず横手の壁を殴りつけた。

カノン「くそっっっ!!!おいサガ!!」

 テレパシーでサガを呼び出す。事実上のSOSである。

カノン「どうすればいいんだこの女!!泣くわ喚くわ言ってることが滅茶苦茶だわ、俺の手に負えん!!」
サガ『フッ・・・馬鹿め。逆上すると論点をすり替え、それこそ異次元の彼方まで論理を飛躍させる。そんなものは女四十八手の一つだ。まだまだ甘いなカノン』
カノン「人にこの状況押し付けておいて馬鹿めとか抜かすか貴様は!!俺はもう嫌だぞ、こんな女は好きにさせとけ!」
サガ『放り出す気か?そうはいかん。もはやお前に彼女を止めろとは言わんが、紫龍の抜けた分、彼女の水先案内を務めてもらおう』
カノン「は!?わけがわからんぞオイ!!追い返したいのだろう!?案内してどうする!!」
サガ『もちろんお引取り頂きたいのがこちらの総意ではあるが、彼女を一人で進ませることのほうがよほど危険度が高いと判断した。特に、次の宮は巨蟹宮だ。無断で住み込まれでもしたらどうする。加勢しろとは言わんから、被害を最小限に食い止めるべく傍についていろ。頼んだぞ』
カノン「お断りだ!!どうして俺がそこまで面倒・・・」
サガ『紫龍を消したのはお前だろう。責任を取れ』
カノン「お前が俺をここにパシッたのはそういう技が使えるからだろうが!!!俺は絶対に嫌だぞ!!」
サガ『嫌でもやれ。言っておくがな、カノン。彼女が巨蟹宮に住み着いた場合、お前の隣人になるということを忘れるなよ』
カノン「!!!!!ちょ・・・・サガ!?サガ!!サガこら殺すぞサガーーーっ!!!」

 しかしサガは一方的に押し付けたまま応答を打ち切ってしまった。
 やり場の無い怒りに、さらに壁を殴りつけまくるカノン。
 そんな彼を、いつのまにか泣き止んでいた春麗が、薄気味悪そうに見ていた。

カノン「!!なんだその目は!!」
春麗「え?あの、えーと・・・・大丈夫ですか?何か大変そうでしたけど」
カノン「お前にだけは言われたくないわ!!」
春麗「ご、ごめんなさい!!・・・・あの、それで、私、もうここを通っていいですか?
カノン「っ!!」

 どのツラ下げてそれを聞きやがるかこの女は。何だ?このツラの皮の厚さも四十八手の一つというわけか?
 ・・・と、思ったカノンであったが、彼の中のセブンセンシズが凄まじい勢いで警報を鳴らしたため、口に出すのは控えた。
 歯軋りしている男の前で、春麗はあくまで無邪気に、

春麗「あの、デスマスクさんが蟹って呼ばれているのは・・・もしかして、蟹座生まれだからですか?」
カノン「・・・・何だ今更。あいつは蟹座生まれの蟹座の黄金聖闘士だ。それがどうかしたか」
春麗「いえ、十二宮って星座の順番に並んでいるんですよね?ここが双子座の迷宮・・・・ということは、次がデスマスクさんのおうちなんですね?お掃除とか勝手にしたら怒られるかしら」
カノン「わかった、通す。通すからここから先は俺の指示に従ってもらおう。人の宮の物に勝手に手を触れるのは禁止だ。必ず主の許可を取ること!主が不在の場合は速やかに宮を抜けること!そして蟹・・・デスマスクに飽きて気が変わった場合は即刻この聖域から出て行くこと!最低限これだけは守れ、いいな!?」
春麗「・・・・・わかりました」

 春麗はしぶしぶ頷いた。
 彼女の前、カノンの背後にはいつしか、迷宮の出口、巨蟹宮へと辿る道が見えていたのであった。



つづく



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